KDD(現KDDI)トップだった板野学の交際費は当時、年間22億円だった
「決して自殺をすすめるわけではないが、日本の大手企業の社長は自殺しない。アメリカのコンチネンタル航空のフェルドマン会長が1981年に自殺した。 ビジネス上の失敗がその原因だったが、このように、ビッグビジネスのトップが自殺することはアメリカでは少なくない。しかし、日本で汚職や倒産などの責任を負って、大手の銀行や鉄鋼会社のトップが自殺することはない。かわりに、部長や課長などのミドルが自殺する。1979年にKDD(現KDDI) 密輸汚職事件が発覚した。元社長の板野学や元社長室長が業務上横領の罪に問われ、1991年3月に東京高裁で2審判決が出たが、収賄罪の郵政省(現総務省)元幹部職員を含めて、板野以外は1審で執行猶予付きの懲役刑を受け、それに服したのに対し、板野だけがまだ争っている。この陰で、これまで事件に関わった2人のKDD社員が自殺したことは、もう忘れられた感じである」
以下は略すが、『佐高信の新・会社考』(朝日文庫)を『朝日新聞』に連載していた時、「自殺しない日本の社長」と題して、1991年4月13日付の紙面でこう書いたら、板野の顧問弁護士から、社員の自殺と板野が関係があるような書き方は名誉毀損に当たるぞという脅しの内容証明便が来た。