2023年は56.2%まで減少…「配偶者手当」を廃止する企業が増えている背景

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「配偶者手当を廃止する企業が増えていることを知っていますか」とするリポートを発表した、ニッセイ基礎研究所総合政策研究部の河岸秀叔研究員が廃止の理由をこう説明する。

「深刻な人手不足を受け、効率的な労働供給を阻害する“就業調整”、いわゆる収入を一定の範囲で抑えるための就業時間の調整への対策が政府主導で進められています。配偶者手当は受給条件として配偶者の収入が103万円以下、または130万円以下とする場合が多く、実質的な年収の壁として就業調整を招きやすいためです」

 106万円で厚生年金健康保険、130万円で国民年金、国民健康保険料の支払いが発生。「年収の壁」による「就業調整」は、主に手取り額の減少を避ける目的で行われる。厚生労働省「21年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」によると、配偶者のいる女性パートタイム労働者の21.8%が就業調整を行っている。

 16年8月に国家公務員の配偶者手当の廃止が決定されたが、国の動きに呼応してトヨタ自動車、ホンダなど大手企業の実施が始まっている。

 共働き、単身者の増加や未婚率の上昇など、従業員のニーズや社会環境の変化から社会全体が廃止に動き始めているが、コスト削減だけではなく、労使間の協議で従業員のモチベーションを高める納得性の高い賃金制度にすることが求められる。

(木野活明/ジャーナリスト)

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