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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

車名はなんと「フェラーリ12気筒」! この最新スーパーカー、いったいなんなの?

公開日: 更新日:

フェラーリ 12Cilindri(車両価格:¥56,740,000/税込み~)

 ある意味イキ過ぎなほどシンプルで、意義深く、なおかつ強気なスーパースポーツが登場した。その名もフェラーリ12Cilindri。数字からイタリア語読みすると「ドーディチ チリンドリ」。頭から直訳すると「フェラーリ12気筒(シリンダー)」になる。

 強引にこのネーミングを日本車に当てはめると「トヨタ6気筒」とか「ホンダ4気筒」「スズキ3気筒」になり、正直ワケがわからない。クルマ好きしかわからない隠語のような車名と言ってもいい。

 だが違うのだ。英語で気筒を表すシリンダーをイタリア語にすると「チリンドリ」と印象的な発音になることもあるが、何よりフェラーリにとって「12気筒エンジン」は特別な存在だからだ。

エンジン音は最新F1をも上回るかも?

 そもそも大衆車に端を発する凡百メーカーと違い、最初からレーシングマシンとそのF1マシンにガワを被せたような少量生産スポーツカーを作ることから始まったのがフェラーリ。細かい逸話はさておき、最初に作った自前のエンジンはV型12気筒だった。

 これは設計や製造、調整こそ難しいが、かみ合えば爆発的なパワーと高回転、美しい音色が得られる回る芸術品。ボディの美しさで知られるフェラーリではあるが、代名詞は実は「12気筒エンジン」。その伝説が今も息づいているというわけだ。

 事実、今回日本初披露された12チリンドリは6.5ℓの大排気量自然吸気V型12気筒を搭載し、最高出力830psの爆発的パワーと678Nmの巨大トルクを発揮する。マシンの時速0-100km加速はわずか2.9秒で。最高速は時速340km。とんでもない高性能であるだけでなく、エンジン音や存在感もとんでもないものになるはずだ。

 なぜなら、このF140型というV12気筒エンジンは、かつての伝説的スーパースポーツ、エンツォフェラーリに搭載されていたユニットが原点。驚くべきは最高回転数でなんと9500回転。今やF1マシンですらエコ化で1.6ℓV6ハイブリッドターボになっている時代。もしや甲高い官能的なマルチシリンダーの高周波エンジン音という意味では、12チリンドリは最新F1をも上回るかもしれない。

最新の欧州排ガス規制「EU6e」をクリア済み

 さらに12チリンドリが面白いのは、クラシカルな2人乗りのボディで、60~70年代の名作FRフェラーリ、365GTB/4デイトナに顔つきが似ている。伝説的な12気筒エンジンと伝説的なFRフォルムを纏った12チリンドリ(12気筒)。もしや今の電動化で、12気筒フェラーリも最後が見えてきており、それを惜しむオマージュであり、メッセージということなのだろうか?

 そう思い、旧知のスーパーカージャーナリストに聞くとこう返ってきた。実は今回搭載されている改良型F140型エンジンは最新の欧州排ガス規制「EU6e」をクリア済み。それどころか、今後さらに厳しくなる規制も突破できる見込みだとか。

 つまり、この新改良V12気筒には未来が残されているわけであり、「逆にフェラーリは今後も12気筒フェラーリを作り続けるというメッセージかもしれませんよ」と。

 昨今の電動化で、あのホンダまでエンジンから撤退するとか、逆にトヨタはカーボンニュートラル燃料の開発推進で、エンジンをなるべく絶やさない方向でいるとか、喧々諤々な内燃機関存続論。

 フェラーリはフェラーリで己の「アートとしてのエンジン」を残したいはずであり、このクルマはもちろん、車名も含めて世界と戦っているのかもしれない。果たして5年後10年後、12気筒エンジンフェラーリは一体どうなっているのだろうか?

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