稀代の大実業家・稲盛和夫氏はなぜ子供たちに「利他」の重要性を伝えたのか?

公開日: 更新日:

一人ひとりが心の庭を整えていく

 みなさんは今、将来に向けて学校や塾で一生懸命に勉強していらっしゃると思います。もちろん、それもとても大切なことですが、さらに大事なのは、今お話しした心の手入れ、心の整理なのです。

 私は、「自分だけよければいい」という利己的でよこしまな心をなるべく抑え、思いやりにあふれた美しい利他の心が、自分の心の大部分を占めるように心の庭を手入れしていくようにしなければならないと言いました。

 実は、この自分の心をきれいにするということは、宗教家の方々が修行や荒行を通じて行っておられます。厳しい修行を通じて自分を鍛え、心を整えるようにしておられます。ですから、ともすると、心を美しくきれいなものにしていくということは、一般の我々が行うことではなく、宗教家の仕事のように思われがちですが、決してそうではありません。

 今、こうして生きている誰もが、自らの心を美しいものにしていくことが、その人の人生にとってたいへん大事なことだということに気づき、「思い」が発するベースである心をきれいにすることに努めなければなりません。

(2014年10月4日 鹿児島市立玉龍中学校・高等学校での講演より)

▽稲盛和夫(いなもり・かずお)
1932年、鹿児島市に生まれる。1955年、鹿児島大学工学部を卒業後、京都の碍子メーカーである松風工業株式会社に就職。1959年4月、知人より出資を得て、資本金300万円で京都セラミック株式会社(現京セラ株式会社)を設立。代表取締役社長、代表取締役会長を経て、1997年から取締役名誉会長(2005年からは名誉会長)。また1984年、電気通信事業の自由化に即応して、第二電電企画株式会社を設立、代表取締役会長に就任。2000年10月、DDI(第二電電)、KDD、IDO の合併により株式会社ディーディーアイ(現KDDI 株式会社)を設立し、取締役名誉会長に就任。2001年6月より最高顧問となる。2010年2月には、政府の要請を受け株式会社日本航空(JAL、現日本航空株式会社)会長に就任。代表取締役会長を経て、2012年2月より取締役名誉会長(2013年からは名誉会長)、2015年4月に名誉顧問となる。一方、ボランティアで、全104塾(国内56塾、海外48塾)、1万4938人の経営者が集まる経営塾「盛和塾」の塾長として、経営者の育成に心血を注いだ(1983年から2019年末まで)。また、1984年には私財を投じ公益財団法人稲盛財団を設立し、理事長(2019年6月からは「創立者」)に就任。同時に、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰する国際賞「京都賞」を創設した。2022年8月、90歳でその生涯を閉じる。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも