生保出向者に相次ぐ内部情報漏洩に銀行ダンマリ…むしろ“財界天皇”を心配する不思議
生保出向者による銀行の内部情報の漏洩は、底なしの様相を呈しつつある。日本生命保険から三菱UFJ銀行への出向者が、同行の内部情報を無断で持ち出していた問題に続き、第一生命保険の出向者も販売シェアに関する内部情報を無断で取得していたことが明らかになったのだ。
驚かされるのは、第一生命が昨年発覚した代理店での契約者情報の漏洩問題をめぐる調査の過程で、この事実を把握していたことだ。しかし、「営業目的での二次利用は確認されず、外部弁護士が不正競争防止法など法令違反には当たらないと判断したため、公表していなかった」という。すでに金融庁は実態把握に乗り出しており、明治安田生命保険や住友生命保険など他の大手生保も調査を進めている。
事件の発端となった日本生命出向者による三菱UFJ銀行の情報漏洩は、7月に外部からの問い合わせで発覚した。不正に情報を持ち出したのは、2024年3月まで三菱UFJ銀行の東京本部のアセットコンサルティング部門に出向していた日本生命社員で、メッセージアプリや郵送、直接の手渡しといった手段で、画像データや内部資料などを日本生命で銀行営業を担当する金融法人部門に送っていた。
漏洩された情報の中には、銀行の行員が保険商品を売った際の業績評価の体系や他生保の商品の改定時期や内容などをまとめた資料も含まれていた。「業績評価体系には、その期に重視する(保険)商品ごとの配点などが明記されており、銀行の営業戦略が丸わかりになる」(メガバンク幹部)という代物だった。
日本生命が12日に公表した調査結果では、これら無断で取得した出向先の情報は、大手行、地銀など7金融機関で計604件に上る。この中には子会社のニッセイ・ウェルス生命の社員が出向先の三井住友銀行とみずほ銀行から内部情報を持ち出していた事案も含まれている。「リテール部門の業務計画に関する資料も持ち出されていた」(同)という。