生保出向者に相次ぐ内部情報漏洩に銀行ダンマリ…むしろ“財界天皇”を心配する不思議
金融村では「コップの中の嵐」?
そもそもなぜ、銀行は生保からの出向者を受け入れていたのか。「出向者を通じて保険に関する知識・ノウハウを吸収し、人材を育成するのが目的だった。出向者は母体生保で優秀と評価されている人材が派遣されていた」と前出のメガバンク幹部は話す。今回の問題を受け、大手行では出向受け入れを停止することを決めた。
だが、意外にも銀行界から日本生命や第一生命に対する厳しい批判はあまり聞かれない。持ち出された情報が営業機密に該当すれば不正競争防止法に抵触する懸念があるにもかかわらずだ。
銀行と生保は、保険の窓口販売を通じて緊密な関係にあるほか、「1990年代後半の金融危機時に、不良債権処理で経営危機に瀕した大手銀行に資本を提供してくれたのは生保さん。元来、金融村では親密な関係で、階層ごとに横の連絡は密にある。人材交流もその一環でもある」(同)というのだ。
むしろ、銀行側が気にしているのは、5月に経団連会長に就いたばかりの筒井義信氏(日本生命前会長)のこと。金融界から初の財界天皇だけに、「母体での情報漏洩でやりにくいのではないか」(同)と、おもんぱかっているほどだ。生保出向者による銀行の内部情報の漏洩は、金融村では「コップの中の嵐」に過ぎないようだ。