景気回復の遅れは「反動減」が原因なのか
政府は8月の月例経済報告で、「駆け込み需要の反動の長期化が景気を下押しするリスクに留意する必要がある」と指摘したそうだ。消費増税の直後は「夏から回復」との見方が多かった。ところが、ちっとも指標は上向かず、弱気になり始めているらしい。4―6月のGDP成長率が大きく落ち込むのは想定していたが、7―9月まで引きずるとは思っていなかったのだろう。第2四半期でも立ち直れない恐れが強くなり、「反動減の長期化」を懸念せざるを得なくなった格好だ。
それでも政府は経済の実態を見損じている。この落ち込みは「駆け込み需要の反動」ではない。増税前に大きな買い物をしたのは、団塊の世代から上の層だ。それよりも下の現役世代は、金銭的な余裕が少ない。雇用が安定しない若年層はなおさらだ。むろん反動減の要素があるのは否定しない。だが、それだけが落ち込み原因とするには、数字が大きすぎる。
今の日本経済は、成長のエンジンが失われた状態なのだ。指標が上向いてこないのは当然である。
個人消費の減少は実質賃金が大幅に減ったのが大きい。給与を増やしたのは一部の大手企業だけで、それすら増税分で吹っ飛んでしまった。しかも、中小零細は取り残されている。一部で人手不足が出ているとされるが、一部の業種、職種に偏っていて、非常にいびつだ。あらゆるところで雇用が活発になっているという姿ではない。人口が減少傾向にあるのも、消費にはマイナス。とてもじゃないが日本経済を引っ張る力はない。