芸術祭中止の機会に再考したい「表現の自由」の本質と原則
憲法21条(表現の自由の保障と検閲の禁止)は、人間社会の中に当然に存在する多様な意見の自由な流通と衝突を経て、そこから、あらゆる問題に関して国民の理解を深め、個人としても集団としても正しい判断ができる社会状況を維持するためにある。
そういう意味で、公権力も放送メディアも、それが権利乱用(つまり明白な嘘)である場合、または明らかに公益に反する場合(つまり名誉毀損や犯罪教唆)の他は、表現の自由を尊重しなければならない。
だから、公のイベントであれ、公の施設であれ、放送メディアであれ、本来的に公共性のある場では、対立のある論点について表現することを希望して来た者には公平に「先着順」に機会が与えられるべきである。
それに対して、公のイベントの主催者や公民館の管理者や放送の編成担当者が、例えば「その表現は『反日的』で気に食わない」という理由で「特定の」表現行為を事前に排除するとしたら、それは典型的な検閲で憲法違反である。もちろん、それが事後であっても、表現の中止、あるいはその後の排除を招くものは、検閲の一種として違憲であることに変わりはない。