基礎年金と関税交渉は棚上げ、消費税減税せず…石破政権の「参院選対策」はことごとく裏目に
パンは具がなくてもおいしいが、石破政権の「あんこのないあんパン」は到底いただけない。政府が16日国会に提出する方針の年金制度改革法案だ。「あんこ」だったはずの基礎年金の底上げ案を削除し、就職氷河期世代が抱える低年金リスクを無慈悲にも放置した。石破政権の最優先事項は夏の参院選。国民生活は二の次である。
■「慎重な意見」とは有権者への「争点隠し」
年金法案は今国会で、首相が委員会などに出席する「重要広範議案」に指定されている。当初、政府・与党は3月上旬に法案提出を見込んでいたが、選挙を控える参院自民を中心に「国民の理解が得られない」などと異論が噴出。スッタモンダした挙げ句、ひねり出したのが基礎年金の底上げを削除した「あんこのないあんパン」だった。
野党から早期提出をせっつかれる中、提出自体を先送りするわけにもいかず、自民党は13日の総務会で法案を了承。単に体裁だけを取り繕ったに過ぎず、経済成長しない限りは基礎年金の給付水準が2057年に今より3割も減るという待ったなしの大問題への対処は先送り。非正規雇用が多く、年金受給額が低いとされる就職氷河期世代にとって死活問題だが、福岡厚労相は14日の衆院厚労委員会でも、底上げ案について「与党の法案審議でも慎重な意見があった」と“やらない言い訳”を重ねた。
与党内では、底上げ案が受け取る厚生年金の一時的な減少や将来的な増税を招くとの懸念が根強い。「慎重な意見」とは詰まるところ、有権者への説得を諦めた単なる「争点隠し」に過ぎないのだ。
「小泉内閣が『100年安心の年金』をブチ上げてから約20年。当時、自公政権は大宣伝したものですが、年金制度の破綻が叫ばれて久しいのに、今も昔も場当たり的な対応に変わりはありません。いつの時代も政権与党は、選挙前には国民に甘言をささやいたり、あるいは自分たちに不利になることは隠したり。今や政治家とは名ばかりで、今だけ、カネだけ、自分だけの『政治屋』ばかりです」(政治評論家・本澤二郎氏)