球児、監督だけじゃない 甲子園開幕にプロスカウト戦々恐々
「派手なプレーなんてしなくたって構わない。ただ、いつも通りの動きを見せてくれれば、それでいいんだ。ホント、頼むよ。こっちは祈るような心境なんだから」
こう言って深~いタメ息をついたのは、西の方のプロ球団のあるスカウトだ。夏の甲子園に緊張しているのは、出場校の選手とは限らない。プロ球団のスカウトの中にも、戦々恐々なのがいる。
夏の甲子園を前に、各球団ともチェックすべき選手のリストをつくる。各地区の担当スカウトがピックアップした選手がもとになっている。その選手の実力をフロント幹部以下、複数のスカウトたちが見極める。ピックアップした選手が大したことなかったり、逆にピックアップしていない中に掘り出し物がいたりすれば、担当スカウトは赤っ恥。選手を見る目を疑われることになる。
「いや、地区予選でマズいことがあった直後だけにね……」と冒頭のスカウトがアタマをかきながらこう続ける。
「九州の右腕がいいって聞いて、地区予選を見に行ったんだ。そしたら、いきなり5者連続三振だよ。ストレートのキレもバツグンによく見えたから、試合途中にもかかわらず部長に電話を入れたんだ。『とんでもないピッチャーが出てきましたよ!』ってさ。そしたら30分もたたないうちに火だるまになって負けちゃったから、バツが悪いのなんのって。これでオレが推薦した選手が甲子園で散々だったら、何を言われるかわからないからね」
炎天下、額から流すのは冷や汗になりそうだ。