著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

64年東京五輪で最終聖火ランナー務めた坂井義則さんの最期

公開日: 更新日:

 そして、こうも言った。

「驚いたのは、その後だね。トーチの火を消そうと水の入ったバケツに突っ込んでもなかなか消えない。つまり、開会式が雨天になったときを想定してトーチを作った。日本の技術者は凄いと思ったよね」

 広島県三次市出身で早稲田大1年生の19歳。坂井が最終聖火ランナーに選ばれた大きな理由は、くしくも誕生日が広島に原爆が投下された45年8月6日だったからだ。

 だが、決定まではメディアがスッパ抜き合戦をした。当時のスポーツ界は早稲田閥の日本陸連が主導権を握っていたため、陸連本部の金庫が破られ、幹部の自宅に盗聴器を仕掛ける事件も起きた。スクープしたのは朝日新聞。坂井は振り返り語った。

「6月のオリンピック代表陸上選手選考会の準決勝で敗退。やけくそで実家に帰っていたら朝日の記者が来て、ぼくを強引に汽車に乗せた。まずは大阪に行き、伊丹からセスナ機で羽田まで飛んだ。それからはもうホテルで拉致状態だったよね。国立競技場に連れて行かれて写真を撮られ、朝日が号外でスッパ抜いたんだが、NHKまでがニュースで『坂井君の行動はけしからん!』などと報道する。参ったよねえ」

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  2. 2

    海星・陣内優翔は長崎県初の“完全男”だが…スカウトが「上位獲得」を渋るワケ

  3. 3

    NHK「昭和16年夏の敗戦」は見ごたえあり 今年は戦争特別番組が盛りだくさん

  4. 4

    二階堂ふみ&カズレーザー電撃婚で浮上したナゾ…「翔んで埼玉」と屈指の進学校・熊谷高校の関係は?

  5. 5

    自死した元兵庫県議の妻がN党・立花孝志党首を「名誉毀損」の疑いで刑事告訴…今後予想される厳しい捜査の行方

  1. 6

    永野芽郁が“濡れ場あり”韓流ドラマで「セクシー派女優転身、世界デビュー」の仰天情報

  2. 7

    突然のがん宣告にも動揺なし「で、ステージはナンボでしょうか?」

  3. 8

    長崎を熱狂させた海星・酒井圭一さんが当時を語る…プロ引退後はスカウトとして大谷翔平を担当

  4. 9

    安藤サクラ「柄本佑が初めて交際した人」に驚きの声…“遊び人の父”奥田瑛二を持つ娘の苦悩

  5. 10

    平和記念式典での石破首相スピーチの評判がすこぶるいいが…原稿を下書きしたのはAIだった?