メッツスカウトとの密会で新庄は提示金額「2000万円」を勘違いし「2億円!」と

公開日: 更新日:

広沢好輝(元ヤクルト、阪神)#1

 2000年11月、六本木にある地下のイタリアンレストランで「密会」をした。新庄と2人、ではない。当時、メッツのスカウトだった大慈彌功さんと3人で。

【写真】この記事の関連写真を見る(55枚)

 この年のシーズン中に取得したFA権を行使した新庄の去就が注目されていた。阪神残留か、国内球団移籍か。メディアが大騒ぎする中、「メッツから連絡が来た!」と喜ぶ新庄から「ついてきて」と言われて同席したのだ。

 それは入団交渉前提の会食で、金額提示もあった。出された数字は20万ドル。契約書を見て「2億円!」と新庄。200万ドルと思っていたらしい。僕が「いや、20万ドル。2000万円やで」と口を挟んだ。

 20万ドルは当時のメジャー最低年俸。大慈彌さんは「こんな金額で申し訳ない」といった感じだった。FA宣言後も阪神とは5年12億円で残留交渉をしていたし、ヤクルトとも交渉を進めていた。まさか2000万円とは思わなかったらしいが、きっと金額を見て闘争心が湧いてきたと思う。

 新庄と僕は同学年で、お互い1989年のドラフト下位で入団(新庄は阪神5位、広沢氏はヤクルト6位)。球団は違ったけれど、僕が96年に入団テストを受けて阪神に移籍してからは、「ご飯に行こう」と誘ってくれたこともあって、気さくにいろんなことを言える仲になった。それ以来、私が97年限りで現役を引退した後も、ハワイや沖縄へ自主トレに行くたびに誘ってくれていた。

愛車はランボルギーニからBMW 普段の新庄剛志は本当に普通の人

 阪神時代から、メディアでは派手な言動が取り上げられることが多かった。先日の日本ハムのファン感謝祭ではランボルギーニで登場したが、阪神時代も契約更改にランボルギーニで訪れ、「しばらくふかさないとエンストするんだ」と心配していた。「給料より車のほうが高い」と笑っていたこともあった。メッツのときの愛車はBMWのX5。ニューヨークなのでアップダウンに適した車種を選んでいた。

 しかし、正直、私の第一印象は「可もなく不可もなく、普通のお兄ちゃん」という感じだった。普段の新庄剛志は本当に普通の人。これが、野球選手の新庄剛志になると違って、自分をプロデュースする能力にたけていた。メッツ時代はまずは名前を知ってもらって覚えてもらわないといけないと、リストバンドを長くしてみたり、いろいろと工夫していた。

 その甲斐あってか、当時の現地の新聞では「日本のロックスター、ジェームズ・ディーンが来た」と取り上げられていたのを覚えている。

 それでも、阪神時代はメディアに不信感を抱いているなというのは一緒にいて感じていた。事実ではないことを書かれたり、プライベートでも追いかけてくる。そのせいか、阪神のときはあまり多くを語らず、だった印象がある。=つづく

▽広沢好輝(ひろさわ・よしてる) 1971年、三重県生まれ。三重県立明野高から89年ドラフト6位でヤクルトに入団。96年に阪神へ移籍。新庄と同学年ということから親交が深く、現役引退後は練習パートナーを務める。現在は三重県で家業のリサイクルショップを経営。 

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    阿部巨人V奪還を手繰り寄せる“陰の仕事人” ファームで投手を「魔改造」、エース戸郷も菅野も心酔中

  2. 2

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  3. 3

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

  5. 5

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 9

    阪神・大山悠輔「5年20億円」超破格厚遇が招く不幸…これで活躍できなきゃ孤立無援の崖っぷち

  5. 10

    田中将大ほぼ“セルフ戦力外”で独立リーグが虎視眈々!素行不良選手を受け入れる懐、NPB復帰の環境も万全

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  3. 3

    悠仁さまのお立場を危うくしかねない“筑波のプーチン”の存在…14年間も国立大トップに君臨

  4. 4

    田中将大ほぼ“セルフ戦力外”で独立リーグが虎視眈々!素行不良選手を受け入れる懐、NPB復帰の環境も万全

  5. 5

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  1. 6

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  2. 7

    結局「光る君へ」の“勝利”で終わった? 新たな大河ファンを獲得した吉高由里子の評価はうなぎ上り

  3. 8

    飯島愛さん謎の孤独死から15年…関係者が明かした体調不良と、“暗躍した男性”の存在

  4. 9

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  5. 10

    中日FA福谷浩司に“滑り止め特需”!ヤクルトはソフトB石川にフラれ即乗り換え、巨人とロッテも続くか