高津ヤクルトV、原巨人は借金2で終戦…交流戦で「監督の手腕」の決定的違い露わに

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巨人は交流戦勝率5割以下でシーズンVなし

 データ上、巨人の今季の優勝が消滅した。

 12日の楽天戦に大敗し、交流戦は8勝10敗の借金2で終幕。原政権では、過去12度のセ・パ対決で7度の勝ち越しをマークしている巨人はそのすべてでリーグ優勝を果たしている一方、勝率5割以下だった5度はいずれもV逸しているのだ。

 この日は先発の山崎伊織が二回に一挙5失点で降板すると、代わった鍵谷陽平も楽天打線の勢いにのまれて4失点。早々と勝負が決した。

「先発投手の責任というのは重いものでね。きょうは甲子園の決勝戦のようなつもりで戦っていこうとスタートしたんだけど、残念ながらという結果になってしまった」

 とは、ベンチで眉間に皺を寄せっぱなしだった原辰徳監督。気を取り直すように、「まあ、まだ途中ですからね。少し調整、矯正してペナントレースを戦っていきます」と話したが、交流戦でのチーム防御率は4.10、チーム打率は.227。いずれも12球団中11位と、再開されるリーグ戦に向け不安要素だけが目立つ結果になった。

 対照的にこの交流戦で勢いを加速させたのがヤクルトである。前日11日にセ球団初となるパ全6球団に勝ち越す完全優勝で交流戦Vを確定。この日は、ソフトバンク相手に先発左腕の高橋奎二が今季5勝目を完封で飾れば、打線は八回に20歳の成長株・長岡秀樹の適時打と塩見泰隆の29歳誕生日弾で均衡を破り、交流戦だけで14勝4敗と10もの貯金をつくった。

「交流戦で打率.351、6本塁打、13打点と無双状態だった4番の村上宗隆が牽引する打線もさることながら、投手陣のやりくりで高津臣吾監督の手腕が光っています」

 と、1998年の沢村賞投手でヤクルトOBの川崎憲次郎氏が続ける。

「この日、完封勝利を挙げた高橋奎二は中7日での先発。今季ここまで中5日で登板した先発陣はひとりもおらず、中6日すら12球団で最少の15度しかない。他球団に比べて決して先発陣の駒が充実しているわけではありませんが、高津監督と伊藤智仁投手コーチは中7日、中8日以上の登板間隔を空けて大事に慎重に使っている。誰を使うのかも大事ですが、高津監督はどう使うかを考えている。選手がどうすれば自分の力を存分に発揮できるか。その環境を整えることを最優先しているのです。3連投以上はさせないリリーフ陣の起用にしてもそうです」

高津監督は勝利と育成「二兎を追いたい」を有言実行

 交流戦でのヤクルトのチーム防御率は、12球団2位の2.48。開幕から鉄壁を誇る救援陣の防御率は、1.85(交流戦では1.42)とリーグでダントツである。9日のオリックス戦では2-1の接戦にもかかわらず、“勝利の方程式”である清水昇と守護神マクガフを温存して、今野龍太で試合を締めた。

 その高津監督、今年4月に発売された自著「一軍監督の仕事」(光文社新書)で<僕は「二兎」を追いかけたい。勝ちにこだわりつつも、将来のスワローズを背負って立つ若手にチャンスを与えながら、才能の花が開くのを見てみたいのだ>と書いている。著書の副題にも<育った彼らを勝たせたい>と記している。

「言葉だけじゃなく、実行している。コンディション不良で出遅れた正捕手の中村悠平が復帰してからも、高卒2年目捕手で19歳の内山壮真を併用する形でスタメン起用。この日、決勝適時打を放った高卒3年目の長岡を遊撃のレギュラーとして開幕から全試合でスタメン起用しています。我々の恩師、野村克也元監督は『財を残すは下、仕事を残すは中、人を残すは上』とおっしゃいましたが、高津監督はその教え通り、まさに人を残そうとしているのだと思う。内山の起用にしても、昨季5試合に出場しただけの長岡の抜擢にしてもそうでしょう」(川崎氏)

■「発掘」の旗印も見えない成果

 一方の巨人はどうか。オフにFA補強を封印、原監督は「発掘と育成」を旗印に掲げたものの、この日は開幕ローテーションに抜擢した大卒2年目の山崎が炎上。同じく開幕ローテに加えた大卒新人の赤星優志とともに一軍と二軍を行ったり来たりで、高卒3年目の堀田賢慎は5月6日の登板を最後に二軍に置いたままである。坂本勇人の故障離脱中に遊撃を守って奮闘していた高卒2年目の中山礼都も、坂本復帰後はスタメンからお役御免になっている。

 巨人も救援陣の起用には3連投を避けるなど気を使ってはいるが、ここまで67試合を戦って先発が六回を持たずに降板した試合は28試合。原監督の「短気」が、リリーフ陣を疲弊させ、救援防御率は3.81とヤクルトに大差をつけられている。

 前出の川崎氏が言う。

「高津監督の無理をさせない投手起用は、先を見据えてのことでもある。暑さが増す夏場、連戦が多くなる後半戦、そして優勝争いのヤマ場に向けて、余力を残す戦い方をしているヤクルトはどっしりと戦えるのは確かでしょう」

 その首位ヤクルトと2位巨人のゲーム差は「7」。数字以上の差がありそうだ。

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