「阪急タイガース」誕生の影響と波紋…阪急No.2のオーナー就任報道で“阪神最後の砦”が崩壊

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05年以来優勝なし…ゴタゴタ続きの球団経営

 近年の阪神はゴタゴタが少なくない。最下位に低迷した18年オフ、藤原オーナーは新たに3年契約を結んだばかりの金本知憲監督を電撃解任した。この動きを知らされていなかった谷本副社長は解任当日、矢野燿大二軍監督に翌年の一軍ヘッド就任を内示。後日慌てて、一軍監督就任を打診した。

 コロナ禍の20年には、選手による遠征先での外出禁止のルール破りが相次いだ。阪急阪神HDの角会長ら親会社の幹部はこれを問題視。揚塩球団社長が“更迭”される事態に発展した。

 今回のオーナー交代はチームの成績低迷に加え、経営陣の失態が招いたともいえそうだが、そんな中で浮上しているのがNPBへの預かり保証金30億円の問題だ。

 阪神が06年に阪急の子会社になった際、パ・リーグのオーナーを中心に、「親会社の変更にあたる。預かり保証金等、計30億円を支払う義務がある」との意見が噴出した。しかも、阪急は88年に阪急ブレーブスをオリックスへ売却しているため、再度の身売りを懸念するオーナーもいたという。

 前出の野崎氏は当時、球団の連盟担当として、11球団のオーナーから保証金免除の同意を得るため、説明行脚を行った。その野崎氏が言う。

「根来コミッショナーの尽力もあり、阪急と合併するものの『向こう10年間は阪神(電鉄)にタイガースの経営権を任せる』ということで参入料は免除になりました。それから15年以上、阪神が経営し、身売りすることもなかった。今回は腰を落ち着けて球団を運営し続けたと判断され、参入料問題が再燃する可能性は低いかもしれません。しかし、今後は阪急色が一層、濃くなることは間違いないでしょう」

 事実上の「阪急タイガース」となった今後、球団にどんな影響が及ぶのか。

「監督人事、フロント人事は阪急主導になるでしょう」とは、球団OB。

「球団は今年、矢野監督の後任に平田勝男二軍監督(63)を昇格させようとした。しかし、藤原オーナーが阪急に忖度する形で、角会長が望む早大の後輩である岡田彰布監督の就任が決まった。阪急の影響力はすでにあったわけですが、監督人事はオーナーの専権事項。これからはフロント人事も含めて阪急が表立って主導することになる。阪急は結果にシビアな会社といわれる。球団幹部の刷新はもちろん、ロハス、チェンら新外国人の失敗が続く渉外部門も早々にテコ入れされるかもしれません」

 阪急によって経営が改善され、チームが強化されればファンにとってもうれしい限りだが、喜んでばかりもいられないかもしれない。在阪の放送関係者が言う。

「売り上げが芳しくなくなれば、チケット代の値上げもあるとみています。阪神は90年代の暗黒時代、観客動員に苦戦。星野監督時代の03年に優勝し、翌04年は球団新記録の約352万人を動員した。ファンは球団の財産であり、席料を上げるよりも動員数を増やす努力が奏功した。ただ、阪急阪神HDが親会社になってからは厳しく管理されている。利益が減った際に年間予約席やチケット代を値上げし、つじつまを合わせたこともあります」

 実際、阪神は20年にシーズンシートを価格改定。バックネット裏の「TOSHIBAプレミアムシート」2種はそれぞれ18万円も上がった。前年の19年度決算で、純利益が前年比で約17%減の約8億円に目減りしたタイミングでもあった。

「コロナ禍で観客動員が大幅に制限された20年度は約14億円の赤字を計上。今年は観客動員数は12球団トップを独走しましたが、阪急がタイガースをあくまで『メシの種』ととらえるようなら、ファンにしわ寄せが来るかもしれません」(前出の関係者)

 今回のオーナー交代、さまざまな波紋を呼びそうだ。

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