著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

前田大然が振り返るカタールW杯「勝てるチャンスのあったクロアチアに勝てないのが今の日本の実力」

公開日: 更新日:

「帰国後、少し変装した(笑)」

 そこで気合を入れ直して挑んだクロアチア戦で前田は値千金の先制弾を奪う。それも日本にとって前々からの課題と言われたセットプレーからの得点だった。

「こぼれてきたボールに反応するのは常にやってきたこと。あの時は、体が勝手に動いた感じでした。ただ、W杯で得点なんて想像もしてなかった。周りからは『凄い』と言われたし、日本に帰ってからは人に気づかれたりしたんで少し変装もしたけど(笑)、僕自身は全然変わりませんでした」 

 日本代表史上17人目のW杯スコアラーになった男は自然体を貫く。だが、そのゴールが勝利に繋がらなかったのは悔しい限り。日本は後半にペリシッチ(トッテナム)に同点ゴールを決められ、最終的にはPK負け。またも8強の壁を超えられなかった。

■決め切る力が必要

「負け惜しみみたいになっちゃうかもしれないけど、クロアチア戦は失点シーンくらいしか相手の決定機がなかった。チームとしても(クロアチアは)あれを狙い続けていたはずです。それが実って勝った。彼らの思い通りの展開になってしまいましたよね。僕らが勝てるチャンスは少なからずあった。それでも勝てないのが、今の日本の実力です。選手層が薄いとかコマが足りないとかはないと思いますけど、あとひとつ防いだり、決め切れたりする力をつければ次のステージ進めるのかな。そう強く感じています」

 前田は失点後にピッチを下がり、敗戦の瞬間をベンチで見守ることになった。試合後、セルティック同僚・ユラノビッチ(現ウニオン・ベルリン)と抱擁しながら号泣した彼は「次こそは90分間フルで出られる選手になりたい」という思いを強めたに違いない。

「僕はハードワークとかスプリントが強みですけど、もっと上に行こうと思うならそれだけじゃ足りない。武器が増えれば増えるほどいいと思っています。自分のプレーの幅を広げていくことが大事になりますね」

 前田がそう痛感したのは、W杯のみならず、今季セルティックで参戦した欧州CLの経験によるところも大。レアル・マドリードやライプツィヒといった強豪と対峙したことで足りない部分が数多く見えてきたのだ。

「走力や激しさといった戦うベースはもちろんのこと、スピードにも磨きをかけないといけない。駆け引きや個々で負けないところもレベルアップしていく必要がありますね。3年後の2026年北中米W杯で自分が活躍して日本を勝たせたいと思うなら、やるべきことはまだまだ沢山ある。若い選手もどんどん出てきますし、それに負けないようにやっていきます」

 ここから20代後半に差し掛かる快足FW前田大然が、どのような変貌を遂げていくのか。劇的な進化を期待したい。=つづく

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々