元ヤクルト鈴木康二朗 世界記録の756号を浴びた投手の意地「王さんに打たれて頑張れた」

公開日: 更新日:

 問題の三回、王の第2打席。外角のシンカーで打ち取ることを想定して八重樫は2球続けて外角へ、その後、内角に2球要求した。いつもベースいっぱいに立つ王には内角を見せておかないと、こちらの狙い通り外角球を引っかけてくれないからだ。そして、フルカウントからの6球目。前の打席でも四球を与えていただけに、鈴木にはボールは投げられないという力みがあったのか、外角を狙った球は無情にもど真ん中に。そんな絶好球をもちろん王が見逃すはずはない。打球はライトスタンド中段に消えていった。

 近鉄にトレード後、86年限りで引退するまで鈴木には常に「王に756号を打たれた男」の枕ことばがついて回った。しかし、鈴木は後年こう言った。

「自分が潰れたら王さんが1人の投手を殺したことになる。王さんに打たれたことで頑張れた」

 その言葉通り、鈴木は翌78年は13勝3敗でチーム初の優勝に貢献している。

(清水一利/ライター)

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし