故・伊良部秀輝が描いた見果てぬ夢「野球をやめることになったら、米国で…」
伊良部の生活、考え方の中心にはいつも野球があった。来年でもう36歳。阪神をクビになり、現役続行への道は厳しいと言わざるを得ない。それでも、伊良部の中では、現役を続けるという以上に、野球をやめると決断することの方が困難なのだろうと思う。
その一方で、伊良部がこんなことを言っていたのを思い出す。
「もし、野球をやめることになったら、米国で商売をやろうと思っているんや」
野球と同じくらい、伊良部は経済のことに詳しい。酒を飲んでいても、為替がどうだ、株がこうだ、自由経済の歴史というのは、と話題が豊富。どこで仕入れてくるのか「ウォール街ってとこはな」と米経済の裏話もよく聞いた。あるいは数年後、ボクらは米国で成功した日本人実業家として伊良部の名前を聞くことになるかもしれない。
(この項おわり)
※伊良部さんは2011年7月27日、ロス近郊の自宅で首を吊った状態で死亡しているのが発見された。42歳だった。
▽はしもと・きよし 1969年、大阪府生まれ。PL学園3年時の87年に立浪(中日)らとともに甲子園で春夏連覇を達成。同年のドラフト1位で巨人に入団し、リリーフ投手として活躍。01年にダイエーに移籍。現在は野球評論家。
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