“政治にベッタリ”橋本聖子JOC会長の資質に疑問 政治色強まる28年ロス五輪で毅然とした態度を取れるのか
理事には初代スポーツ庁長官含む3人の政治家が

橋本聖子新会長(60)が就任した日本オリンピック委員会(JOC)が10日に都内で理事会を開き、新たな役員人事を決定。副会長に日本バスケットボール協会会長の三屋裕子氏(66)、国際体操連盟会長で先の国際オリンピック委員会(IOC)会長選に立候補した渡辺守成氏(66)、専務理事にはIOC委員でフェンシングの五輪銀メダリストの太田雄貴氏(39)が選出された。
太田氏はJOCが日本体育協会から独立して以降、歴代最年少の専務理事。女性の登用と若返りを印象付けたが、JOCにはコロナ禍の中で強行された2021年東京五輪でリーダーシップの欠如が指摘され、「政治とIOCの言いなり」との厳しい意見も飛んだ。
“橋本内閣”でJOCは変わるのか。初めて選挙によって選出された橋本会長誕生の舞台裏を含めて、スポーツライターの津田俊樹氏に聞いた。
◇ ◇ ◇
──6人の常務理事を含めた役員10人のうち半数の5人が女性になった。
「もちろん女性の登用は推進されるべきですが、気になるのは橋本聖子新会長と選挙で争った日本サッカー協会前会長の田嶋幸三氏が副会長にならなかったこと。JOCによれば、副会長の就任を打診したものの、田嶋氏が辞退したとしている。田嶋氏はいわゆる“ヒラ理事”に甘んじることになりましたが、橋本氏と田嶋氏はそれぞれ別の派閥に推されて会長選を戦っただけに、JOC内部に禍根を残すことになったのは確かです」
──6月26日のJOCの評議員会とその後の理事会で、山下泰裕前会長に代わる新会長の選挙が行われましたが、当初は田嶋氏が本命とされた。
「私もそう聞いていた。そもそも、JOCが日本体育協会(現日本スポーツ協会)から独立した1989年以降、投票によって会長が選出されたのは初めてのことでした。歴代5人の会長はすべて水面下で一本化され、全会一致で承認という形をとってきた。常に『密室人事』との批判があった一方、会長選出を派閥争いや権力闘争の具にしない、話し合いで一本化することによって内部に禍根を残さない、そういうことが優先された方法でもあった。
今回の選挙を民主的決着と言えば聞こえはいいのですが、実際は本命だった田嶋氏の一本化にJOC内の守旧派が反発。田嶋氏の出身母体が五輪主要競技ではないサッカーだということもあって、橋本氏の擁立に動いた。つまり、今回の選挙は民主的手法というより、それぞれの理事や名誉委員であるJOC元幹部が彼らの都合で蠢いた結果、一本化に至らず、選挙をやらざるを得なかったというのが真相です」
──これまでの密室人事が選挙によって透明性が確保されたわけではないのですね。
「透明性なんてとんでもない話で、最終的に橋本氏、田嶋氏、三屋氏で争うことになった選挙は、その得票数すら明らかにされていません」
──最終的に橋本氏と田嶋氏の決選投票になったなど情報が錯綜した。
「非公開で行われた6月26日の理事会の冒頭で某理事が突然、会長代行だった三屋氏を会長候補者として推薦。推された三屋氏本人は絶句し、5分の休憩後に出馬を決意したといいます。これだけを見てもいかに内部の統制がとれておらず、混乱していたかがよくわかります。
その後、3候補者にそれぞれ10分のプレゼン時間が与えられ、橋本氏は自民党参議院議員としてかかった裏金疑惑について、不起訴になった経緯を踏まえて釈明し、『一点の曇りでもあれば立候補していない』と言い、国会議員が政治からの自律を大前提とするJOC会長になることの矛盾について、『私の真ん中にあるのはオリンピアンの精神。政治家としてサポートするが、政治的介入があればオリンピアンとして守り抜く』と約束した」
──田嶋氏と三屋氏は?
「田嶋氏はスクリーンを使って15項目の提言が書かれた46ページのマニフェストを示した。当初から本命視され、無選挙で会長になるものだと思っていたでしょうから、就任した暁に新会長としての公約を示すつもりで、資料を用意していたのではないか。三屋氏は会長代行としての思いを語って、継続的な組織運営をアピールしたそうです」
──その結果、橋本氏が女性初の会長に選出された。
「先ほど言ったように、投票結果は公表されていない。私が聞いたところによれば、1回目の投票で誰も過半数を取れず、3氏の中で最多得票だった橋本氏が決選投票に進んだ。田嶋氏と三屋氏の間で再度投票を行い、三屋氏が田嶋氏を下して、決選投票で橋本氏が三屋氏を退けたそうです。しかし、得票数が明らかになっていないわけですから、公明正大と胸を張れるものではありません」
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