かつての石井一久の剛毛すぎた強心臓…無断外泊でどつかれた当日の快投に野村監督も呆れていた
それでも、お騒がせな一面はなかなか直らなかった。97年オフに有名女性タレントとの交際が発覚し、これに対してサッチーこと野村克也監督の沙知代夫人が痛烈批判する様子が、ワイドショーのネタとして連日、報道された。
翌98年、遠征先の大阪で事件が起きた。先発予定の日に、宿泊先のホテルから甲子園球場入りするバスに乗っていなかったのだ。「石井はどこ行った? 大丈夫なのか?」と大騒ぎ。すると、何事もなかったかのように、ひょっこり球場に現れた。どうやら無断外泊したらしい。チーム内にはシラけたムードが漂った。
当然、石井は球団関係者にみっちり絞られた。それどころか、どつかれたのも見た。今なら暴力はまずいが、あの時は仕方ないとさえ思った。それほどの規則違反である。罰金も取られたはずだ。巨人だったら即二軍だろう。その点ヤクルトは牧歌的だ。「とりあえず今日は投げろ」とチャンスをもらった。
並の投手なら、とても登板できる状態ではないだろうが、石井はそんな時こそ力を発揮する。その日の阪神戦で快投。しっかり勝ち投手になった。ベンチで野村監督は「あいつは心臓に毛が生えているんじゃないか?」とボソリ。呆れるのを通り越し、すがすがしい気持ちになったものだ。