(10)「12球団で一番劣っている」発言の深層…指導者経験ゼロの松井監督vs工藤中日の開幕カードが楽しみなワケ
左翼守備にこだわって移籍
それは組織に対しても一緒だ。
ヤンキースは当時、メジャーナンバーワンの戦力を誇り、初代スタインブレナー・オーナーの大号令のもと、数々のスター選手をかき集めて「悪の帝国」の異名を取った。勝って当たり前。負ければニューヨークのファンからは激しいブーイングを浴び、メディアにはこっぴどく叩かれる。
松井監督はかつて、巨人を出て移籍先にヤンキースを選んだ理由についてこう言っている。
「ファンやメディアも含めて、自分はシビアな環境に身を置いた方が力を発揮できると思うんだよね」
ベーブ・ルースを筆頭に数々の名選手がプレーしてきた老舗名門球団への憧れもあったかもしれないが、それ以上に自分を生かせる環境ということが大きかった。そしてこうも言っている。
「生涯ヤンキース? そんなふうには考えませんよ。自分だけでなく、相手があること。自分がこのチームでプレーしたいと思い、チームも心底、自分の力が必要と考えて、初めていいプレーができるわけだから」
松井監督はヤンキースでプレーするのがベストと考えていたけれど、だからといってチームにこびたり、自分を安売りすることはなかった。さるマスコミ関係者がこう言った。
「ヤンキースとの3年契約が切れる2005年は、開幕前にヤンキースから3年約38億円の提示を受けながら、交渉をシーズン終了後に先送り。162試合に出場して打率.305、23本塁打、116打点の好成績を残して交渉を再開。あと少しで他球団との交渉が解禁になるギリギリのタイミングまで揉めに揉め、4年約62億円で再契約した。ワールドシリーズMVPを獲得した2009年オフは、ヤンキースがあくまでもDHとしての起用を譲らなかったため、左翼を守ることにこだわってエンゼルスに移籍した」
■「劣っていること」をバネに
松井監督の巨人が開幕戦で工藤公康監督(63)率いる中日と対戦することが話題になっている。
ともに新監督で、工藤監督はソフトバンク時代に5度日本一になった実績がある。そこへいくと松井監督は就任時の会見で「指導者経験はほぼありません。そこは12球団の監督の中で一番劣っている部分だと自覚しています」と話している。指導者として実績ある工藤監督に対し、松井監督は指揮官としては「ひよっこ」だ。しかし、だから結果を出せないとは間違っても考えない。
A・ロッドのパワーを目の当たりにしても動じないどころか、打率と打点は彼を上回る数字を残した。ヤンキースを「自分が最も力を発揮しやすい環境」としながら、起用法に納得がいかないとチームを出てエンゼルスに移籍した。「12球団で最も劣っていることを自覚している」という松井監督は、むしろ「劣っている」ことをバネにするのではないか──。 (つづく)


















