「美しすぎる…!ニッポンの鉄道遺産」笹田昌宏著│往時の記憶を秘めながら今は余生を過ごす鉄道遺産
「美しすぎる…!ニッポンの鉄道遺産」笹田昌宏著
この30年間で廃止された鉄道路線は60余区間、1300キロ以上に及ぶという。
一方で、廃線後も、かつて鉄道が敷設され、人々やさまざまな物を運んでいた痕跡を大切に守り続けている場所が日本には多数ある。
本書は、日本各地に存在するとびきりの鉄道遺産をテーマにした写真集。
巻頭は「機関車・電車・客車」編。
岩手県北上市のSL広場の屋根付きの展示場で大切に保存展示されている「キ228」は、国鉄時代に岩手県の北上線を中心に1976年まで活躍したラッセル車。先頭が鋭利にとがったその独特な風貌と、黒一色の車体に施された黄色の帯が、中世の甲冑を連想させ、「鉄仮面」の愛称で呼ばれていたそうだ。
山形交通三山線で走っていた「モハ103」は、1974年の廃線後も地元の酒造店の敷地内で保存されてきた貴重な「木造単車」。1928年生まれの車両は、100歳を目前にして消滅の危機に直面したが、地元住人によるクラウドファンディングで集めた資金で修復され、車体のペンキは市民参加で塗り直されるなど、見事に復活展示されている。
SL「雨宮21号」は、かつて材木を運ぶために敷設された北海道の「武利意森林鉄道」で活躍後、1958年の廃車後に解体される運命だったが、地元有志の尽力でピンチを脱し、地元自治体に寄贈されたという。そして、1982年からは季節限定で公園内を走り来園者を楽しませる「現役」だ。
他にも、醤油会社が製品を最寄りの駅まで搬送するために用いた現存するディーゼル機関車として国内最古参のドイツ製舶来機など、各車両の来歴とともに現在の姿を写真で紹介する。
続く章では、廃止後は一時バス待合所などとして活用されていたが、現在では国の登録有形文化財に指定され大切に継承されている山形交通高畠線高畠駅の石造りの駅舎(1974年廃止)や、和風駅舎の最高傑作とも称されるJR西日本大社線の大社駅(1990年廃止)など、駅や機関庫・施設などを取り上げる。
さらに、明治時代に開通し、今もSLの煤がそのまま壁面に残るJR東日本中央本線の大日影トンネル(1997年廃止)や、船と貨車との間で材木を運んだ清水港駅の跡地に残る曲線美が美しい「テルファークレーン」(1984年廃止)など橋梁・トンネル・廃線跡など、テーマ別に紹介。
中には、国鉄士幌線幌加駅(1978年運転休止)のように、廃止後に長い時を経てプラットホームと線路が自然に溶け込み、その美しい風景が観光客を呼び、営業中よりも人々が集まるようになった場所もある。
現役時代の活気や賑わいの記憶を秘めながら、今は静かに余生を過ごす鉄道遺産が見る人の心にさまざまな思いを起こさせることだろう。
(イカロス出版 2310円)



















