「とっぴんぱらりの風太郎」万城目学著

公開日: 更新日:

<命を賭すべきものを見つけたとき、人は変わる>

 関ケ原の戦いが終わり、世の中が一応平穏を取り戻したころのこと。主人公の風太郎(ぷうたろう)は、伊賀の忍びの元締、采女(うねめ)が取り仕切る柘植(つげ)屋敷で、地獄のような忍者修行に明け暮れていた。

 同期生は個性派揃い。若いくせにどじょうひげを生やした嫌みな蝉、南蛮育ちで、のんびりマイペースな黒弓、クールで美貌の常世(とこよ)、これまた美貌で神出鬼没な百(もも)。互いに切磋琢磨していたが、実地訓練で失敗をしでかした風太郎は屋敷を追われ、あてもなく京に上る。だが、戦のない世に忍びのニーズはなく、プータロー状態。ひょんなことから、畑でひょうたんを育てる羽目になる。

 著者初の時代小説は、750ページに及ぶ一大巨編。現代のニートな若者を400年前にタイムスリップさせたようなコミカルなノリだが、やがて風太郎と仲間たちは、歴史の大舞台に立たされることになる。

 ひさご様と呼ばれる風変わりな貴人、妖しい力を持つ因心居士など、特異なキャラが絡み合い、舞台は大坂城へ。

 命を賭すべきものを見つけたとき、人は変わる。がんばれ、風太郎! 手に汗にぎるクライマックスが待っている。
(文藝春秋 1900円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵・中井監督が語っていた「部員は全員家族」…今となっては“ブーメラン”な指導方針と哲学の数々

  2. 2

    11歳差、バイセクシュアルを公言…二階堂ふみがカズレーザーにベタ惚れした理由

  3. 3

    中居正広氏は法廷バトルか、泣き寝入りか…「どちらも地獄」の“袋小路生活”と今後

  4. 4

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  5. 5

    二階堂ふみと電撃婚したカズレーザーの超個性派言行録…「頑張らない」をモットーに年間200冊を読破

  1. 6

    開星(島根)野々村直通監督「グラウンドで倒れたら本望?そういうのはない。子供にも失礼ですから」

  2. 7

    最速158キロ健大高崎・石垣元気を独占直撃!「最も関心があるプロ球団はどこですか?」

  3. 8

    風間俊介の“きゅるるん瞳”、庄司浩平人気もうなぎ上り!《BL苦手》も虜にするテレ東深夜ドラマの“沼り力”

  4. 9

    前代未聞! 広陵途中辞退の根底に「甲子園至上主義」…それを助長するNHK、朝日、毎日の罪

  5. 10

    山下美夢有が「素人ゴルファー」の父親の教えでメジャータイトルを取れたワケ