「日本人へ 危機からの脱出篇」塩野七生著
<歴史&世界から国難脱出法を探る>
「文藝春秋」連載の同名エッセーから生まれた「日本人へ」シリーズの第3弾。「リーダー篇」「国家と歴史篇」に続く本書は、東日本大震災が起きた時期を含む2010年5月から13年10月までに掲載された42本が収録されていることもあり、「日本は今の危機からどのようにして脱出するか」がテーマのひとつになっている。著者が得意とするヨーロッパと日本との比較文化論や政治論のキレも健在だ。
著者は、日本の大震災を「未曽有の国難は新旧世代の交代にはチャンスになる」として震災を糧にして進むよう鼓舞。世界中にカントリーリスクがゼロの国はどこにもないとして、日本企業は国内で国際競争力を持つ製品を製造したらどうかと提案する。さらに、イタリアでは、モンティ政権が実施した緊縮策によって市民の経済活動がガラス張りになった状況を紹介。徴税の簡素化が起こらない代わりに、取れるところから貪欲に税金をむしり取る政策によって、イタリア人は金を使おうとしなくなったと指摘。
増税ラッシュ、規制強化、政治の混迷など、日本と類似する事象から学ぶことは多そうだ。