「我れ、美に殉ず」小嵐九八郎著

公開日: 更新日:

 江戸時代を代表する4人の絵師たちの壮絶な生涯を描いた歴史小説。「あっしは絵が好きなんでえ」「描きてえわい」。異口同音に絵に対する執念を吐露し、命尽きるまで描き続けたことが4人の絵師の共通点。

 久隅守景は狩野派を破門され、権威や枠を打ち破る「この一点」を描こうと七転八倒した。同じく狩野派の絵師、英一蝶は、流罪の憂き目にあい、はるかな江戸、吉原への思いを絵に込めた。伊藤若冲は青物問屋から絵師に転身、生きとし生けるものを描き続けた。浦上玉堂は武士を捨て、七弦琴と絵筆を携えて諸国を放浪。

 彼らはなぜ、地位や家業を捨ててまで絵筆一本に懸けたのか。作者は絵師たちの心の内に入り込み、その激しい揺れと微妙なひだを描き出す。彼らは時に「あ、おーん」と嘆き、「うっ、う……む」と苦悶し、「うん、ふふっ」と膝を打つ。絵師の業の凄みが生々しく迫ってくる。
(講談社 1900円)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  2. 2

    国民民主党の支持率ダダ下がりが止まらない…ついに野党第4党に転落、共産党にも抜かれそうな気配

  3. 3

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  4. 4

    来秋ドラ1候補の高校BIG3は「全員直メジャー」の可能性…日本プロ野球経由は“遠回り”の認識広がる

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  3. 8

    脆弱株価、利上げ報道で急落…これが高市経済無策への市場の反応だ

  4. 9

    「東京電力HD」はいまこそ仕掛けのタイミング 無配でも成長力が期待できる

  5. 10

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー