「シェリ」コレット著、工藤庸子訳

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【話題】ゾラの「ナナ」は、高級娼婦としてパリの上流人士たちを次々と籠絡して破滅に追いやったが、その激しい蕩尽ぶりは自らの命も縮め10代で短い生涯を終えた。もし彼女が長生きしていたら、どんな女性になっていたのか? コレットのこの作品は、そんな想像をかき立ててくれる。

【あらすじ】レアは、かつて高級娼婦として名を馳せ、現在は相当な財産をため込んで優雅な隠退生活を送っている49歳。この6年間、娼婦仲間の息子で美しい青年の「シェリ」と付き合ってきた。わがままで粗野なこの青年に対し母親的な愛情も込めて何くれと世話を焼いてきたが、シェリの母親は2人の関係を好ましく思っておらず、半ば強引にシェリを若い娘と結婚させる。レアはシェリの結婚を素直に受け入れるが、いざ別れるとなると、いかにシェリの存在が大きかったかを思い知らされ、現実から逃避するかのように傷心の旅に出る。

 一方、シェリもまた若い妻との結婚生活に飽き足らず、心は常にレアを追いかけていた。久しぶりにパリに戻ってきたレアの元をシェリが訪れる。渇きを癒やすように2人は激しく愛し合うが、その翌朝、レアはシェリの目に自分の老いが映っていることに気づく。やはりこの関係は断ち切らざるを得ない、そう決心したレアは強い別れの言葉をシェリに投げつける……。

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