「XY」徳永圭著

公開日: 更新日:

 物語の主人公は、手芸用専門商社で商品の仕入れをしている宗谷聡子33歳。会社の健康診断で右の卵巣の腫れを指摘され、精密検査で卵巣嚢腫が発覚した。

 ショックを受けて帰る道すがら、聡子はふと駅のホームでユリの花束を持って立つ黒いスーツの男に目を留める。喪失感を抱えたような不思議なたたずまいに目が離せなくなったがそのまま気を失って倒れ、その男に助けられた。そして摘出手術を受けた後、偶然その男と再会して恋に落ちる。しかし特許事務所に勤め、広いマンションでひとり暮らしをしていたその堂島という男は、聡子の知らない事情を抱えていた。聡子は堂島を愛するがゆえに、禁断の行動を開始する……。

 本書は、2011年に「をとめ模様、スパイ日和」で第12回ボイルドエッグズ新人賞を受賞してデビューした新人作家の最新作。生きることにハリをなくしていた主人公が病気や恋愛を経て、思い切った賭けに出る心模様とラストの仕掛けが読みどころだ。(KADOKAWA 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋