「~石畳の路地裏散歩~ ヨーロッパの窓」上野美千代 写真・文

公開日: 更新日:

 ヨーロッパの古い街並みを散策中に見つけた美しい窓や個性的な窓を撮影したポケットサイズの可愛らしい写真集。

 マンションや建売住宅が並ぶ日本の街中の風景に慣れ親しんだ頭には、美しい窓や個性的な窓といわれてもなかなか想像できないが、百聞は一見にしかず。ページを開くと本当に窓のオンパレードなのだが、決して退屈することはない。

 まずは表紙にもなっているフランス・ルシオンで撮影されたピンク色の壁と白い枠のコラボレーションからなる窓をじっくりと見てみる。

 計算されたように絶妙のバランスで壁を這うツタの緑と、窓枠に置かれた壁と同系色の花鉢がつくり出す一枚の絵のような風景は、自分たちの楽しみのためではなく、外を通りかかる人たちを喜ばせようとする住人の心遣いとしか思えない。そんな一枚の写真から、街を愛する住人の心さえ伝わってくる。

 ドイツ、ベルギー、スペインなど、ヨーロッパ各国のさまざまな路地で撮影された窓の写真が、それぞれ「開き窓」や「木組み・レンガ」「アイアン・ガラス」などに分類されて並ぶ。絵本の中に紛れ込んだようなドイツ・ハーメルンの枠飾りがユニークな窓、レストランだろうかチェコ・プラハの夜、温かな明かりが漏れてくるステンドグラスの窓、そして重厚な彫刻で装飾されたスイス・ジュネーブのビルの窓など。添えられている情報は撮影地だけなのだが、並ぶ窓を見ているうちに、散策しながらその街並みを楽しんでいるような気分になってくる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  4. 4

    高市政権大ピンチ! 林芳正総務相の「政治とカネ」疑惑が拡大…ナゾの「ポスター維持管理費」が新たな火種に

  5. 5

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  1. 6

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 7

    沢口靖子vs天海祐希「アラ還女優」対決…米倉涼子“失脚”でテレ朝が選ぶのは? 

  3. 8

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  4. 9

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  5. 10

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち