著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「ブレイン・ドレイン」関俊介著

公開日: 更新日:

 犯罪性向を持つ邪悪な人間「欠落者」を選別できるようになった近未来が舞台。欠落者は脱出不可能な人工島に隔離されている。主人公のセイは中学3年のときに受けたテストで欠落者と判定され、それから13年、ずっと人工島で暮らしている。

 しかし彼は、自分が正常な人間であることを知っている。つまり欠落者を判定するテストには欠陥があるということだ。だがセイにはどうすることもできない――これが本書の基本設定である。

 その人工島に潜り込んだ医学生を捜し出し、生きたまま島から出すことを彼は依頼され、本書が始まっていく。詳しい説明は省くけれど、人の殺意が赤い色となって見える特殊能力をセイは持っている。脳で発生する思考を一瞬早く読み取る能力で、それが「ブレイン・ドレイン」だ。だから、戦うとき相手のナイフがどこを狙うのかが彼にはわかるのだが、後ろから襲ってくる敵の思考を読むことはできない、というのもうまい設定だ。

 邪悪でない人間を島に閉じ込める目的は何なのか、潜入した医学生の狙いは何か、という大きな謎を背景に、スリル満点な謎探索行が快調に展開するが、一番の美点は、後半に登場する真に邪悪な人間との対決が鮮やかであることだ。飲んだくれの教授をはじめとして、さまざまな脇役たちの造形もいいが、この邪悪像が屹立している。セイよ、おまえはこの敵を倒すことができるのか、とひたすら応援するのである。(光文社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊池風磨も認めるtimelesz“タイプロバブル” YouTubeなしテレビ主戦場…独自路線の成否

  2. 2

    侍J捕手・中村悠平らが“NPBルール改変”を提言 「日本ガラパゴス野球」では勝てない現実

  3. 3

    侍J選手を“殺した”井端監督の偏重起用、場当たり、塩漬け…こうして結束力に亀裂が生じた

  4. 4

    パチスロファンからは辛辣な声も多数…『スマスロ 北斗の拳 転生の章2』は本当に“期待外れ”だったのか

  5. 5

    元EXILE黒木啓司がLDHを離れたワケ…妻のド派手すぎるセレブ生活が遠因か

  1. 6

    FA加入の松本剛が阿部巨人の足枷にならないか OP戦打率1割台と不振も「130安打宣言」と大風呂敷

  2. 7

    高市首相の“悪態答弁”にSNSで批判殺到! 共産&れいわの質問に「不貞腐れたガキレベル」の横柄さだった理由

  3. 8

    「国宝」日本アカデミー賞10冠の陰で…森七菜“最優秀助演女優賞”逃した不運と無念

  4. 9

    議員会館でも身体重ね…“不倫男”松本文科相は辞任秒読み! 虚偽答弁疑惑に「コメント控える」連発の卑劣

  5. 10

    渋野日向子は「歩き方」を見直せ!専門家が解説する仰天メリット