「コーヒーが冷めないうちに」川口俊和著

公開日: 更新日:

 路地裏の地下にある喫茶店フニクリフニクラ。そこのある席に座ると、望んだ通りの時間に移動ができるという。ただし、そのためには面倒くさいルールが存在した。過去に戻っても、この喫茶店を訪れたことのない者には会えない、どんなに努力しても未来は変わらない。過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまうまでの間……。

 自分を置いてアメリカへ行く彼氏に、言いそびれた正直な思いを伝えようとする女性。若年性アルツハイマーで記憶を失っていく夫が自分に渡し忘れた手紙を受け取りに行く看護師の妻。家出した自分に代わって旅館を継いだ妹が交通事故死してしまい、生きているうちに死ぬ前には言えなかったある言葉を秘めた姉。自分の死を覚悟しながらもお腹に宿る娘に会いに未来へ行く喫茶店で働く妊婦。いずれも未来を変えられないと知りつつも時間を移動するが、そこには思わぬ奇跡が待ち受けていた。

 ルールだらけのタイムスリップというユニークな仕掛けが予想外の感動を呼ぶ。(サンマーク出版 1300円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  2. 2

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  3. 3

    マツコが股関節亜脱臼でレギュラー番組欠席…原因はやはりインドアでの“自堕落”な「動かない」生活か

  4. 4

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  5. 5

    巨人・田中将大と“魔改造コーチ”の間に微妙な空気…甘言ささやく桑田二軍監督へ乗り換えていた

  1. 6

    5億円豪邸も…岡田准一は“マスオさん状態”になる可能性

  2. 7

    小泉進次郎氏8.15“朝イチ靖国参拝”は完全裏目…保守すり寄りパフォーマンスへの落胆と今後の懸念

  3. 8

    渡邊渚“初グラビア写真集”で「ひしゃげたバスト」大胆披露…評論家も思わず凝視

  4. 9

    「石破おろし」攻防いよいよ本格化…19日に自民選管初会合→総裁選前倒し検討開始も、国民不在は変わらず

  5. 10

    大の里&豊昇龍は“金星の使者”…両横綱の体たらくで出費かさみ相撲協会は戦々恐々