「ハーバードの人生が変わる東洋哲学」マイケル・ピュエットほか著、熊谷淳子訳

公開日: 更新日:

 西洋社会が取り組んできた政治社会思想は、ベルリンの壁崩壊後に新自由主義へとたどり着いた。しかし現実には、貧富の格差は拡大し、不満を抱える人たちが増えている。幸福と繁栄のために理性に頼るように教えてきたが、果たして本当にそうなのか。マイケル・ピュエット教授は、そう問いかける。ハーバード大学の中国哲学の講座で繰り広げられるこうした同教授の講義には、学生が殺到しているという。

 有名なトロッコ問題(暴走したトロッコの線路上に5人おり、ポイントを切り替えれば5人を助けられるが、別の線路上にいる1人を殺すことになる時どうするか)のような問題設定を中国哲学は行わない。とっさのときにどう動くかは理性だけでは到底答えを出せないからだ。

 日々の行動に目を向け、出来事に対して礼をもって反応するよう鍛錬することを説いた孔子や、勤勉や合理的な意思決定が報われるとは限らないことを指摘した孟子らの教えを紹介しながら、ピュエット教授は従来の西洋哲学の盲点を突く。

 米国のエリートを魅了する講義がどのようなものなのか、本書を通して知ることができる。(早川書房 1600円+税)


【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市首相が招いた「対中損失」に終わり見えず…インバウンド消費1.8兆円減だけでは済まされない

  2. 2

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

  5. 5

    「NHKから国民を守る党」崩壊秒読み…立花孝志党首は服役の公算大、斉藤副党首の唐突離党がダメ押し

  1. 6

    国民民主党でくすぶる「パワハラ問題」めぐり玉木雄一郎代表がブチ切れ! 定例会見での一部始終

  2. 7

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  3. 8

    男子バレー小川智大と熱愛報道のCocomi ハイキューファンから《オタクの最高峰》と羨望の眼差し

  4. 9

    長女Cocomiに熱愛発覚…父キムタクがさらに抱える2つの「ちょ、待てよ」リスク

  5. 10

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ