大山倍達は真樹・梶原の兄弟仲にヤキモチ

公開日: 更新日:

「吉田豪の空手★バカ一代」吉田豪著(白夜書房 1528円+税)

 格闘家たちが思わず本音を漏らした、フルコンタクト的インタビュー集だ。

 早大生時代から極真の雄として活躍、現在は大道塾を率いる東孝塾長が語る梶原一騎の思い出話が凄い。

 東孝青年と劇画界の首領が飲んだときのこと。

〈東「そのうち悪酔いして、タクシー乗ったら気分が悪くなったのよ。それで窓から外に出せばいいのに、梶原先生に出しちゃったの(笑い)」
――え! ゲロかけちゃったんですか(笑い)。

東「さすがにマズいことしたなと思って次の日に行ったら『東、昨日は酔ったな』って、それだけだったのよ」〉

 強面イメージの大梶原の意外な一面がのぞく。

 極真の猛者、現在は士道館・添野義二館長が語る格闘家たちの素顔も興味深い。

〈「大山(倍達)先生は子供っぽいとこあるんだよ。ヤキモチ焼きなの。女のジェラシーよりも男のジェラシーのほうが怖いんだよね。真樹先生、梶原先生は兄弟仲が良かったのよ。俺、梶原先生と仲良かったの。そうすると真樹先生はヤキモチ焼くんだよ。大山先生もそうなの」〉

 インタビュアー吉田豪の神懸かり的な乗せ上手によって、武道家の赤裸々な姿が露呈される。

 思い起こせば、1980年秋、添野義二が極真を破門され、その余波で義兄弟とされた大山倍達・梶原一騎が反目したスキャンダルを追ったことが、私の物書き稼業のスタートだった(懐かしい!)。

 サングラス、パンチパーマで強面の格闘家、小説家・梶原一騎の実弟、真樹道場率いる真樹日佐夫宗師に私も以前、インタビューしたことがある。テーマは童貞喪失。

 真樹宗師、しばらく沈黙。サングラスの下の目は不機嫌そうだ。気分を害したのか。すると――「そっちから聞いてくれねえとなあ。話しづらいぜ」。

 含羞の人だった。

【連載】裏街・色街「アウトロー読本」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

  2. 2
    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

  3. 3
    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

  4. 4
    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

  5. 5
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  1. 6
    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

  2. 7
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 8
    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

  4. 9
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異