「ジハーディ・ジョンの生涯」ロバート・バーカイク著 野中香方子訳

公開日: 更新日:

 イスラム過激派組織ISILに所属し、カメラの前で人質の首を切り落としたとされる黒覆面の死刑執行人「ジハーディ・ジョン」。その映像は、あっという間に世界中に広まり、多くの人々を戦慄させた。

 身元捜しの結果、ジハーディ・ジョンがクウェート難民としてロンドンで育ったモハメド・エムワジであることが判明。著者は、それがかつて取材をした一人の青年であることに気づいて驚愕する。5年前の彼は、大学でITを学んだ礼儀正しい青年だった。一体何が彼をテロリストへと変身させたのか……。

 本書には両親と共にイギリスに渡った幼少期のエピソードや、イスラム過激派と疑われて厳しい監視下に置かれ、職も婚約者も失うことになったことなどがつづられていく。脅迫的な尋問や監視が、逆に若者たちを先鋭化させ、次々とジハーディ・ジョンが生まれる土壌があることも指摘。巻末添付のクローズアップ現代の元キャスター・国谷裕子氏の解説も興味深い。(文藝春秋 1900円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「マラソン」と「大腸がん」に関連あり? ランナー100人への調査結果が全米で大きな波紋

  2. 2

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態

  3. 3

    高市総裁「首相指名」に漂う不安…自民党内は“厭戦ムード”も燻る火種、飛び交う「怪文書」の中身

  4. 4

    秋季関東大会で横浜高と再戦浮上、27連勝を止めた「今春の1勝」は半年を経てどう作用するか

  5. 5

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  1. 6

    高市自民、公明からの三行半で早くも本性露呈…「やられたら秒でやり返す」「イキらなきゃ負け」のオラオラ体質

  2. 7

    出来たとしても高市政権は短命…誰も見通せない激動政局の行方を徹底分析(前編)

  3. 8

    佐川宣寿元理財局長のメール開示「遺族と話し合う」…森友文書で加藤財務大臣が明言

  4. 9

    進次郎氏落選もダメージなし? 妻・滝川クリステルが目指した「幸せ家庭生活」と耳にしていた夫の実力

  5. 10

    侍J井端監督 強化試合メンバー発表の裏に「3つの深謀遠慮」…巨人・岡本和真が当選のまさか