「『海道東征』への道」新保祐司著
2015年11月下旬、北原白秋作詞、「海ゆかば」の作曲者である信時潔作曲の交声曲(カンタータ)「海道東征」の演奏会が行われた。この曲は神武天皇の東征を題材として、昭和15年、「紀元2600年」の奉祝曲として作られたものだった。戦前は盛んに演奏されたが、戦後は封印されてきた。
ところが、最近、島木健作ら「誤解されてきた人物」が取りあげられる動きがあり、信時潔にも光が当てられるようになった。帝政ロシアの圧政下で作られ、第二の国歌のように歌われているフィンランドの「フィンランディア」のように、「海道東征」も扱われるべきではないか。日本社会の精神史を考察した一冊。(藤原書店 2800円+税)