時代に翻弄される「沖縄の底力」

公開日: 更新日:

「沖縄は未来をどう生きるか」大田昌秀、佐藤優著

「琉球独立」をとなえ、米大統領選ではトランプ勝利のほうがいいとまで主張する最近の沖縄。その底力を探る――。

 アメリカとの粘り強い交渉姿勢がいまなお記憶に新しい元革新県知事と、外務省の切れ者官僚ながらスパイ容疑で逮捕勾留された“外務省のラスプーチン”。この意外な組み合わせは? と思ったら、実は佐藤氏の母が沖縄・久米島の出身で、大田氏とは遠縁に当たるのだという。ただしそれは単なる奇縁。本書はこの2人が正面から基地問題、沖縄の歴史といま、そして琉球独立論までを語り合った対談集。

 学者政治家として学識豊かな大田氏に対して、佐藤氏はユニークなアイデアを次々披露。沖縄問題の解決には「地元から優秀な中央官僚をどしどし増やすべき」と助言する。「基地か地域振興(経済援助)か」という耳慣れた議論は「赤線だって地域振興と言い抜けられる」と一刀両断の一方、琉球独立論には「私には父の国と母の国が一つであった方がいいという偏見があります。(略)しかし、沖縄独立論を聞くと血が騒ぐ」との矛盾も口にする。収録されたのは合計7年にわたる記録。速成企画では得られない深みのある内容だ。(岩波書店 1700円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  3. 3
    試合ガタ減り、選手クーデター未遂…“不毛の8年”で晩節汚した青木功JGTO会長ついに退任

    試合ガタ減り、選手クーデター未遂…“不毛の8年”で晩節汚した青木功JGTO会長ついに退任

  4. 4
    岸田自民は補選「全敗」確定情報…島根1区も水面下で“白旗”揚げちゃった? 党幹部すら諦めモードの末期状態

    岸田自民は補選「全敗」確定情報…島根1区も水面下で“白旗”揚げちゃった? 党幹部すら諦めモードの末期状態

  5. 5
    ソフトB山川穂高を直撃「古巣への不義理、SBファンの拒否反応をどう思っていますか?」

    ソフトB山川穂高を直撃「古巣への不義理、SBファンの拒否反応をどう思っていますか?」

  1. 6
    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

  2. 7
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  3. 8
    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

  4. 9
    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

  5. 10
    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ