「国家とハイエナ」黒木亮著

公開日: 更新日:

 今年の2月、アルゼンチンと米国ヘッジファンドとの間で争われていた債務返済に関して合意が成立したというニュースが報じられた。本書は、この国を相手取った訴訟に勝利を収めたヘッジファンドの実態を詳細に描いた本格国際金融小説。

「法律書を持ったハイエナ」の異名をとるサミュエル・ジェイコブスは、不良債権投資で巨利を得るヘッジファンドの創業者兼CEO。同社は破綻した国家の債権をタダ同然の安値で手に入れ、額面に金利や遅滞損害金を含めた金額を払えと米国や英国の裁判所で訴訟を起こし、投資額の10倍、20倍のリターンを上げ、〈ハイエナ・ファンド〉とあだ名される。

 そのターゲットは、ペルー、ザンビア、コンゴ共和国、アルゼンチンといった重債務貧困国(HIPC)。債権回収のためには原油タンカーの差し押さえなど容赦なく、強力な弁護団を擁して国家を相手取る。こうした動きを阻止すべく奮闘するのが発展途上国支援のNGO。本書に描かれるヘッジファンド、国家、NGOの三つ巴の戦いは、ほぼ現実そのままというのが衝撃的。(幻冬舎 1800円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希「負傷者リスト入り」待ったなし…中5日登板やはり大失敗、投手コーチとの関係も微妙

  2. 2

    朝ドラ「あんぱん」教官役の瀧内公美には脱ぎまくった過去…今クールドラマ出演者たちのプチ情報

  3. 3

    佐々木朗希「中5日登板志願」のウラにマイナー降格への怯え…ごまかし投球はまだまだ続く

  4. 4

    早期・希望退職の募集人員は前年の3倍に急増…人材不足というけれど、余剰人員の肩叩きが始まっている

  5. 5

    河合優実「あんぱん」でも“主役食い”!《リアル北島マヤ》《令和の山口百恵》が朝ドラヒロインになる日

  1. 6

    巨人秋広↔ソフトBリチャード電撃トレードの舞台裏…“問題児交換”は巨人側から提案か

  2. 7

    TBSのGP帯連ドラ「キャスター」永野芽郁と「イグナイト」三山凌輝に“同時スキャンダル”の余波

  3. 8

    キンプリが「ディズニー公認の王子様」に大抜擢…分裂後も好調の理由は“完璧なシロ”だから 

  4. 9

    永野芽郁&田中圭「終わりなき不倫騒動」で小栗旬社長の限界も露呈…自ら女性スキャンダルの過去

  5. 10

    低迷する「べらぼう」は大河歴代ワースト圏内…日曜劇場「キャスター」失速でも数字が伸びないワケ