かつて新宿に、“連続射殺魔”永山則夫と北野武、中上健次が出入りしていたジャズ喫茶があったという都市伝説がある。だが、その「ビレッジ・バンガード」はBGMにはやりのジャズを流しているだけのとんでもなくショボイ店で、終夜営業のため、電車の始発待ちに使われている店だった。著者も、代々木ゼミのデモ仲間と、高倉健映画のオールナイト上映を見た後、時間潰しをしたことがある。フーテン時代の中上健次が通い、北野武がボーイをしていたのはもう一店の「ジャズ・ヴィレッヂ」らしい。
みゆき族やアイビー・カット、全共闘など、60年代の文化が詰まったおもちゃ箱のようなエッセー集。(小学館 1650円+税)