「人類は絶滅を逃れられるのか」スティーブン・ピンカーほか著、藤原朝子訳
カナダのムンク財団は、2008年からグローバルな政策課題をめぐって世界最高峰の4人の識者を招き、「ムンク・ディベート」と呼ばれる討論会を行っている。4人が二手に分かれて討論するとともに、聴衆がディベートの前と後とでどのくらい意見を変えたかで勝敗を競うというもの。
本書のテーマは「人類の未来は明るいか」。肯定派はハーバード大学の認知心理学者スティーブン・ピンカーと英国貴族院議員で科学ジャーナリストのマット・リドレー。対する否定派は、ジャーナリストでベストセラー作家のマルコム・グラッドウェルとスイス生まれの哲学者アラン・ド・ボトン。肯定派は具体的な数値を示して過去50年間で貧困、戦争、疫病などが確実に減少していることを指摘。一方否定派は、グローバル化と高度情報化の裏には意想外の危機がはらまれ、それが人間の脆弱性と合わさる危険性を警告する。双方の議論は噛み合っていないが、来るべき未来にどのような問題が待ち受けているのかは明示されている。(ダイヤモンド社 1400円+税)