著者のコラム一覧
太田治子作家

1947年生まれ。「心映えの記」で第1回坪田譲治文学賞受賞(86年)、近著に「星はらはらと 二葉亭四迷の明治」(中日新聞社)がある。

人間はあまり大きな顔をしてはいけなそう

公開日: 更新日:

「入門!進化生物学」小原嘉明著/中央公論新社 880円+税

「入門!進化生物学」というタイトルのこの本を読んでみたくなったのは、娘が大学で生物系の勉強をしていたからであった。しかし、節足動物群だけで百十数万種と書かれていると、あまりの数の多さに気が遠くなった。脊椎動物だけでも600万種余りだという。それも、動物界全体からみると全動物のわずか4%、さらにヒトを含む哺乳類の割合は例外的な希少グループとされているらしい。人間はあまり大きな顔をしてはいけないような気になってくる。

 そもそも、進化とは何なのか? この本の帯に「奇妙な姿かたちも 進化のたまもの!」とある。奇妙とはどういうかたちをいうのか? それすらも、わからなくなってくるのである。

「入門!進化生物学」には、ダーウィンの進化説(進化論)についての詳しい解説が書かれている。一方、中立遺伝子についての解説もある。中立遺伝子のことを、私は何も知らなかった。ダーウィンの言っている自然淘汰をすり抜ける突然変異のことらしい。自然淘汰とは別に、偶然そのようなことも起こり得るということなのだろうか。とてもむつかしい。娘に聞いてみると「高校の教科書に出ているよ」そうさらりと言った。

 1960年代後半、国立遺伝学研究所の木村資生さんが、かの有名な「ネイチャー」に論文を発表した。木村さんは、日本人唯一のダーウィン・メダル受賞者だという。

 やはりこの本を読んでいて面白いのは、動物のさまざまな個性に触れられる箇所である。ジャコウウシは、オオカミの攻撃に対して、子供たちを守るために防衛の円陣を作り、その囲いに入れてからオオカミと対決する。かつての日本の軍部は、女子供も一緒に、「一億総玉砕」と叫んだという。なんという違いだろう。人間は、多くの動物たちから学ぶことがたくさんありそうである。

【連載】生き生きと暮らす人生読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘