北朝鮮の危険な動き 先入観にとらわれない真実の姿

公開日: 更新日:

「独裁国家・北朝鮮の実像」坂井隆、平岩俊司著

 国際社会の批判と圧力を無視してミサイル発射の実験を繰り返す金正恩。とかく若く経験不足の独裁者が気まぐれに起こす行為とみなされがちだが、本書の著者はきわめて意図的な対米行為とみる。

 実験を繰り返すことで米韓は高高度迎撃ミサイルシステムを充実させ、中国はこれを対中包囲網の強化と見て反発する。このしたたかな計算で、北朝鮮はみずからすり寄らずとも中国を自陣に引き込めるというのだ。

 他方、中国にとって朝鮮有事を避ける非核化は重要だが、日本とは全く違った長期の時間軸で見ているという。また中国にとって北朝鮮を無理に非核化したところで、得られるものは多くないことも重要。それゆえ日米が中国に期待し過ぎないのが肝心。北朝鮮の国内事情についても通説どおりの恐怖政治は考えにくい、とみる。脱北者の増加も、食うや食わずのためではなく、厳しくなった不正摘発に追われた官僚の逃亡ではないかと説く。要は先入観にとらわれない多面的な見方ということだ。

 公安調査庁で北朝鮮情報の分析にたずさわった元部長と北朝鮮情勢の専門家が対談形式で解き明かす独裁国家の実像。(朝日新聞出版 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

  2. 2
    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

  3. 3
    若い世代にも人気の昭和レトロ菓子が100均に続々! 製造終了のチェルシーもまだある

    若い世代にも人気の昭和レトロ菓子が100均に続々! 製造終了のチェルシーもまだある

  4. 4
    巨人にとって“フラれた”ことはプラスでも…補強連敗で突きつけられた深刻問題

    巨人にとって“フラれた”ことはプラスでも…補強連敗で突きつけられた深刻問題

  5. 5
    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

  1. 6
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7
    「監督手形」が後押しか…巨人入り目前から急転、元サヤに収まった真相と今後

    「監督手形」が後押しか…巨人入り目前から急転、元サヤに収まった真相と今後

  3. 8
    東京15区補選は初日から大炎上! 小池・乙武陣営を「つばさの党」新人陣営が大音量演説でヤジる異常事態

    東京15区補選は初日から大炎上! 小池・乙武陣営を「つばさの党」新人陣営が大音量演説でヤジる異常事態

  4. 9
    高島彩、加藤綾子ら“めざまし組”が大躍進! フジテレビ「最強女子アナ」の条件

    高島彩、加藤綾子ら“めざまし組”が大躍進! フジテレビ「最強女子アナ」の条件

  5. 10
    「救世主にはなり得ない」というシビアな見方…ピーク過ぎて速球150キロ超には歯が立たず

    「救世主にはなり得ない」というシビアな見方…ピーク過ぎて速球150キロ超には歯が立たず