足を踏み入れた人にした分からない美大の真実

公開日: 更新日:

「美大生図鑑 あなたの周りにもいる摩訶不思議な人たち」ヨシムラヒロム著

 東京芸術大学を「最後の秘境」と位置付け、芸大生の天才奇才ぶりを紹介する本が話題となった。しかし、武蔵野美術大学出身の著者は、美術・芸術大生の全員が個性的とは限らないという。美大も決して秘境ではないと。

 本書では、自らの体験を踏まえながら、レッテルを貼られがちな美大生や美大のありのままの姿を紹介する。

 ほとんどの美大では、実に学生の7割が女子で、学内はほぼ女子大の様相を呈しているという。しかし、彼女たちは入学当初こそ、おしゃれにも気を使っているが、制作の道具を持ち歩いたり、絵の具やインクで服が汚れるため、学年が上がるごとに女子力は低下。中身も男っぽく、精神的にもタフで、男子学生もたじたじだそうだ。

 また、女子大生の多くは作品のために全裸になることもいとわず、最初は彼女たちの裸に興奮していた男子学生も、いつしかそれが当たり前に感じられてしまうのだとか。

 さらに、かつては実技一辺倒の入試だったが、現在は推薦や論文、面接で入学する学生も多くなったので、絵が全く描けなくても美大生になれるという。

 そのほか、ヌードデッサンの実態や、卵をボール紙1枚で包み、割れない折り方を考える課題(実際に校舎の4階から落とす実験もあり)など、モノを生み出し続けるための造形力を身につける講義の中身は興味深い。

 大学のクラブ棟に住み着いた年齢不詳の長老と呼ばれる先輩学生や、ウエディングドレス並みの全身真っ白のコーディネートで講義する教授など、学生も学生なら、教授陣もさらにその上を行くアクの強さを放っている。

 読むほどに、著者の意図に反して秘境・変人だという思いが強くなってくるのはなぜだろうか。(飛鳥新社 1111円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  2. 2

    佐々木朗希“大幅減速”球速160キロに届かない謎解き…米スカウトはある「変化」を指摘

  3. 3

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  4. 4

    ヤクルト村上宗隆 復帰初戦で故障再発は“人災”か…「あれ」が誘発させた可能性

  5. 5

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  1. 6

    フジの朝ワイド「サン!シャイン」8時14分開始の奇策も…テレ朝「モーニングショー」に一蹴され大惨敗

  2. 7

    「皐月賞」あなたはもう当たっている! みんな大好き“サイン馬券”をマジメに大考察

  3. 8

    セレブママの心をくすぐる幼稚舎の“おしゃれパワー” 早実初等部とアクセスや環境は大差ナシ

  4. 9

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  5. 10

    下半身醜聞・小林夢果の「剛毛すぎる強心臓」…渦中にいながら師匠譲りの強メンタルで上位浮上