著者のコラム一覧
白石あづさ

日本大学芸術学部卒。地域紙の記者を経て約3年間の世界放浪へと旅立つ。現在はフリーライターとして旅行雑誌などに執筆。著書に「世界のへんな肉」「世界のへんなおじさん」など。

帝国データバンク調査員が明かす地獄エピソード

公開日: 更新日:

「あの会社はこうして潰れた」藤森徹著 日本経済新聞出版社850円+税

 一流大学を出て、大手企業に就職したはずの友人が暗い。聞けば、ボーナスは現物支給、ついにライバル企業に吸収され、見切りをつけて転職していく同僚を「あいつも脱北」、親会社との間にある垣根を「38度線」と呼ぶそうな。出世街道まっしぐらのはずが、いきなり修羅の道を歩むことになって気の毒だ。

 最近では、てるみくらぶの惨事が記憶に新しい。新聞にどでかい広告を出しながらも、黒い噂はくすぶり、ある日、どっかーん! と大噴火。イケイケドンドンに見える会社でも、本当のことは分からない。そこで依頼された会社を調べ上げ、調査結果を売るのが帝国データバンクという企業だ。本書には、その調査員による企業倒産や破産寸前の地獄エピソードが描かれている。

 借金が返せないのに巨額広告を打って銀行に激怒されるジーンズのエドウイン、ハーバード大卒の4代目“甘ちゃん経営者”がカモにされて傾いたアイスノンの白元、元AKBのMを広告塔に使って話題になったリゴレの超速の転落……と老舗企業もベンチャーもあっけなく最後を迎えていくのだが、どこに就職をしてもロシアンルーレット状態だと腹をくくるしかない。

 おお、そして恐ろしいことに、われらが出版界の闇にもザクザク切り込んでいる。最近の若者が本を読まないから、出版社が潰れるのだと憤慨するも、実はその逆で、儲かって浮かれて業務を拡大中の出版社のほうが危ないようだ。大ヒット本「こびとづかん」の作者が三くだり半を突き付けたことが致命傷になった長崎出版、斬新な企画を次々と生んだギャル雑誌「小悪魔ageha」のカリスマ編集長が見捨てたインフォレストの経営の泥沼っぷりに驚く。

 出版界の隅っこで地味に生きている私をだまそうとする人は今のところ出てこないが、うっかり著書が売れて大金が振り込まれたら大変だ。きっと悪い出版社が寄ってくるに違いない。そんなときは調査員が企業の何をチェックしているのか熟読するとしよう。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  3. 3

    「マクドは健康保険と年金に加入できてよかった」 シニアが働き続けるために必要なこととは?

  4. 4

    東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い

  5. 5

    NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に

  1. 6

    菊池風磨はジャニー喜多川氏の“推薦”もあって慶大総合政策学部に進学 仕事の合間に1日10時間の猛勉強

  2. 7

    KDDIが楽天モバイルへの「ローミング」終了でライバルの“品質低下”を狙い撃つ

  3. 8

    豊昇龍が長期離脱で大の里までピンチ! “ひとり横綱”の重圧で「共倒れ」にならないか

  4. 9

    徳川光圀(1)水戸黄門は全国漫遊などしていない 主に出かけたのは江戸と領地の往復

  5. 10

    永野芽郁がキャバ嬢で「復帰」もM!LKファンやきもき…共演するかもしれない佐野勇斗への“キラー”ぶり警戒