トランプ政権誕生の原動力になったアメリカ底辺層のリアル

公開日: 更新日:

「ドラッグと分断社会アメリカ」カール・ハート著 寺町朋子訳

 貧しい黒人地域の7人姉弟の下から3番目に生まれ、高校時代まではクールガイを気取ってクスリや銃を試した著者。高卒後に空軍に入り、沖縄駐留時に大学の講座を受講したことから次第に学問の道へ。いまではコロンビア大の心理学科を率いる重責を担う有名な心理学者にまでなったのだ。

 その生涯を自らふりかえりながら、著者が主張するのは「薬物依存」への偏見と薬物犯罪への厳罰化の行き過ぎ。著者は自分の経験から薬物使用者は「ジャンキー」ではないという。厳罰化で投獄や社会的非難が重なるうちに依存に追い込まれてしまう。つまり依存は「つくられる」というのだ。

 著者は薬物を勧めているわけではなく、ほんのわずかな社会環境の違いが、いかにマイノリティーの社会のなかに壁をつくり、社会の分断を生み出すかを自分自身(と周囲)を実例に語る。

「貧困から抜け出せない黒人」への批判に対するていねいで有力な反論にもなっている。(早川書房3000 円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝