「和菓子を愛した人たち」虎屋文庫編著
「暴れん坊将軍」として時代劇でもお馴染みの徳川吉宗には好物の菓子があった。東海道の名物、きな粉をまぶした安倍川餅だ。駿河国出身の家臣が作る安倍川餅がお気に入りで、家臣も「富士川の雪水で育てたもち米がおいしさを生む」と考え、わざわざ駿河からもち米を取り寄せて作っていたという。享保の改革で倹約を強い、自らも食生活のぜいたくを戒めたが、この安倍川餅だけは主君を思う家臣の気持ちを思いやって味わったかもしれない。
小説家芥川龍之介はニヒルな印象とは裏腹に、かなりの菓子好きだった。特に好きだったのが汁粉で、上野の常磐という店をひいきにし、小倉汁粉をお代わりするのが決まりだった。
室町時代に京都で創業した虎屋が持つ菓子資料を基に、清少納言や森鴎外ら歴史上の人物100人の和菓子にまつわるエピソードを紹介。(山川出版社 1800円+税)