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「AX(アックス)」伊坂幸太郎著

 主人公は、普段は文房具メーカーに勤めるサラリーマンとしてごく普通に暮らしている殺し屋・兜。凄腕の殺し屋だったが、実は殺しの仕事よりも、予測不能な妻のご機嫌をうかがうことに何よりも神経を使って過ごしている。そんな兜は、息子・克巳が生まれて以来、殺し屋の仕事に疑問を持つようになり、何とかやめたいと思い始めた。しかし、殺人依頼をしてくる仲介屋の医師にあれこれと脅され、なかなかこの世界から足を洗うことができない。もちろん、家族は兜の殺し屋の仕事については何も知らなかった。やめると家族に危害が及ぶのではと危惧するなか、果たして殺し屋稼業から無事に脱出できるのか……。

 人気の著者による恐妻家の殺し屋を主人公にした連作短編集。夜中に帰宅した際に妻を起こさないように細心の注意を払う主人公と、家族思いの父親の姿を複雑な思いで見つめる息子の関係がストーリーを思わぬ展開へと運んでいく。殺し屋という仕事と主人公のキャラクター設定のギャップが絶妙で、読み手を飽きさせない。

 ユーモアと家族愛が満ちており、読後に温かな気持ちになれる。

(KADOKAWA 1500円+税)

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