「悩むなら、旅に出よ。」伊集院静著

公開日: 更新日:

 旅先で出合った言葉は、五感を通して深く記憶に刻まれる。歳月を経ても、その土地の光や風、人の息遣いが蘇る。

 定職もなく、酒に溺れていた若き日の著者に、海辺のホテルの支配人が言う。

「急ぐことはありません。悠々としていればいいんです。そういう仕事もあります」

 生まれ育った港の町で、海峡の向こうの国に思いを馳せ、「あの国は遠いの?」と尋ねる少年時代の著者に、若き父は答える。

「なーに、汐が良ければ一晩さ」

 作家・城山三郎は、美術作品を巡る旅を続ける著者に言う。

「そこに行かなくては見えないものがあるのでしょうね」

 国内外の旅、人生の旅の途中で心に響いた34の言葉を集め、じっくりかみしめた、大人の味の紀行文集。

 旅は楽しいばかりではない。悲しみや苦さを含んでいる。何者ともつかない自分を持て余し、手さぐりしていた若い日の旅。いくらか分別がついてからの旅。年を重ね、大切な人との離別を何度となく経験してからの旅。人生の深まりにつれて、旅も深まっていく。どんな知識も情報も、旅にはかなわない。いい旅をしたいものだ。

 (小学館 1400円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    池袋を暴走し母娘の命を奪った元通産官僚「記念館」の真偽

  2. 2

    飯島直子は自分のアソコに水着の上からポラで割れ目を…

  3. 3

    安倍政権GW外遊ラッシュ 13閣僚“海外旅行”に血税5億の衝撃

  4. 4

    応援演説にブーイング 杉田水脈議員が「自ら招いた危険」

  5. 5

    吉高「定時で」も視聴率上昇 TBS火曜22時ドラマに“仕掛け”

  6. 6

    立憲民主“三重苦”で…野党結集へ態度一変した枝野氏の焦り

  7. 7

    宇多田ヒカル 時代問わない別次元の才能と“人間活動”で…

  8. 8

    GW歴史的10連休でどうなる 身の回りで気になる8つの疑問

  9. 9

    まだ“愛の巣”で生活か? ZOZO前澤社長&剛力彩芽の近況

  10. 10

    プーチンに3000億円も献上し物事が後退してしまうって…

もっと見る

編集部オススメ

  1. {{ $index+1 }}

    {{ pickup.Article.title_short }}

もっと見る