「琥珀の夢」(上・下)伊集院静著

公開日: 更新日:

 明治40年、大阪船場の寿屋洋酒店に一人の丁稚が自転車を引きながらやってきた。新し物好きの店の主人、鳥井信治郎が当時としては破格の高級車を買い、それを届けに来たのだが、その丁稚こそ後に「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助だ。サントリーと松下電器という日本経済を牽引することになる2人の出会いから物語は始まる。

 鳥井信治郎は大阪の両替商の次男として生まれ、船場の道修町の薬種商店に丁稚奉公し、そこで舶来のウイスキー、ぶどう酒、ビールの製造を学び、20歳で自分の店を立ち上げる。本場のワインは苦いと敬遠されていた当時、苦心の末に赤玉ポートワインを発売、斬新な広告の効果もあって一躍人気を博す。さらにウイスキーの製造に着手するが、商品になるまで5~10年かかるのに莫大な建設費が必要とあって、周囲は大反対。それを押し切って日本初の国産ウイスキーを造り上げる。

 転んでもただでは起きず、常に新しいことを追求していく主人公の情熱的な姿は、元気を失っている日本の経営者たちに活を入れることになるだろう。

(集英社 各1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  4. 4

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  5. 5

    timelesz篠塚大輝“炎上”より深刻な佐藤勝利の豹変…《ケンティとマリウス戻ってきて》とファン懇願

  1. 6

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  2. 7

    国民民主党“激ヤバ”女性議員ついに書類送検! 野党支持率でトップ返り咲きも玉木代表は苦悶

  3. 8

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  4. 9

    波瑠のゴールインだけじゃない? 年末年始スクープもしくは結婚発表が予想される大注目ビッグカップル7組総ざらい!

  5. 10

    アヤックス冨安健洋はJISSでのリハビリが奏功 「ガラスの下半身」返上し目指すはW杯優勝