日刊ゲンダイDIGITAL

  • facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger

老いを楽しむ本特集

「やばい老人になろう」さだまさし著

 見た目の若さや華やかさが過剰に礼賛される日本。老いた者には「清くちんまりおとなしく」を強いられがちだ。老人だからこその成熟と寛容を今こそ発揮すべきではないか。卑下することなく、老いを楽しむ秘訣の詰まった5冊を紹介する。



 昭和のフォークソング界でヒット曲を連発、今は小説も執筆する著者が憧れるのは「やばい老人」だという。知識が豊富で、どんな痛みも共有してくれる、そして何かひとつスゴイものを持っている、というのが条件だ。

 豪胆な祖母や、破天荒な父のエピソードも面白いが、文学界から芸能界まで、実に多くのすてきな老人と出会っている。 かなりの偏屈だが、小説を書くことを勧めてくれた安岡章太郎、柔和な重鎮・井伏鱒二、人間関係の本質を看破した遠藤周作、事実をもとに面白おかしく脚色する話芸の達人・永六輔に、会う=関わり合うことだと教えてくれた小沢昭一。そうそうたるメンバーであり、すてきなじじぃだったと回顧。また「人間の完成形はおばあちゃん」という。やばいばばぁとして、瀬戸内寂聴の魅力にも触れている。

 最終章は今の日本と若者に提言する「さだ節」が炸裂。著者もすてきにやばいじじぃである。

(PHP研究所 1100円+税)

「人は、老いない」 島田裕巳著

 オウム真理教事件への見解が一躍話題になり、激しいバッシングにさらされた宗教学者の著者が「老成」について説く。50代手前で大病を経験し、老いについて考えたことが契機だったという。

 儒教における孔子の言葉では、老いることに重要な価値を見いだす。年齢を重ねるにつれ、人は円熟する「老成」が前提だ。ところが仏教では、釈迦は「老病死の苦」ととらえ、老い=苦と説く。老いを否定的にとらえるのではなく、価値のあることととらえ直す視点が今必要だと著者は考える。

 老後問題は今や国民的関心事となっているが、本当に老後などあるのか、老後ではなく「老成の期間」という発想の転換が必要だとも説いている。

 成熟して徳を完成するのではなく、老いても成長を続けていくこと、先へ進もうと意欲的に生きること、それが老成の条件だ。絶えず新たなものへの関心を失わず、自分を向上させるために努力する。それが老成の本質だという。

(朝日新聞出版 720円+税)

「老年を愉しむ10の発見」ヴィルヘイム・シュミット著 津崎正行訳 養老孟司解説

 ドイツのベストセラー作家であり、哲学者の著者は言う。「老化と戦うことに力を浪費するよりは、しわの中に刻み込まれた人生とともに堂々と歩きたい」と。「アンチ・エイジング」よりも「アート・オブ・エイジング」、年をとる術を身につけることが大切であり、泰然とした落ち着きへ至ることだと提案する。

 10の提案をいくつかまとめてみる。「経験という財産を活用し、老いの兆候と折り合いをつける」。たとえば「まだお元気ですね」「まだ若い」の「まだ」は上向きの段階にいる証拠という。さらに「楽しめない日も無駄ではない」「避けられない困難も最終的に何かの役に立つ」「影がなければ光もない」など、今悩んで立ち止まっている人の心に響く言葉もある。

 つい名言や格言を探してしまうが、解説者の養老孟司氏が最後にクギをさす。「これはそういう読み方をする本ではないと。座右の銘をむやみに乞うのではなく、主題を自分で考えろ」と。

 なるほど。発見するのは読者なのだ。

(三笠書房 1300円+税)

「枯れてたまるか!」嵐山光三郎著

 落語を聴いているような軽快な気持ちにさせてくれる「老い」論とくれば、この本である。「週刊朝日」の連載をまとめ、書き下ろしも掲載した一冊。

 痛快なのは、老人は枯れるのが美しいとする枯淡派に対し、「無理して枯れてみせ、すっかり捨てて防御に入る」と毒づくところ。「年をとっても色情を手放すなかれ」と、欲望に素直な著者の雄たけびがタイトルに。

 温泉好きで旅好き・釣り好き、食への好奇心と文学に捧げる愛情。尊敬すべきは「血縁よりも友人が頼り、ガールフレンドとしっぽり山の湯へ、が信条」という点だ。さらには能に落語、映画に芝居、清水ミチコにTHE ALFEEと、興味と熱狂の対象は数知れず。好奇心が旺盛どころか、あふれ出す75歳の著者を見習いたいものである。

 ついでに言えば、100歳の母・ヨシ子さんのくだりもこれまた面白い。老いてなおますますワガママだそうで。要介護4でも決して枯れないヨシ子さんに敬意を払いたい。

(新講社 1400円+税)

「老い越せ、老い抜け、老い飛ばせ」石川恭三著

 80歳の現役医師がアグレッシブかつシニカルに書きつづった、いわば「老いへの果たし状」だ。著者自身は、家の中での服装や時間の使い方、レジでの小銭の出し方など、自らに強く課す信条がたくさんある。一方で、同輩に対しても甘くないのが爽快だ。高齢者は「経験武装」をした強者であると断言し、弱者だと思い込んで人の助けを安易に期待する老人には喝を食らわす。年寄りだから特別扱いされて当然とばかりに振る舞う老人を「見苦しい・目を背けたくなる」と叩き斬る。独立自尊を心がけろというのだ。

 嫌なことも面倒なことも面白がってやってみる。また、思い込みで硬い殻に閉じこもる人は、己の欠点を自覚して、自らこじ開けて出るしかないなど手厳しく戒める。多発する高齢者の山岳事故や交通事故には、思い込みという問題点を指摘する。

 医療現場の裏話や長寿の秘訣も含め、実に快活でエネルギッシュな語り口だ。老いている場合じゃないと痛感するだろう。

(河出書房新社 780円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事