「長く高い壁」浅田次郎著

公開日: 更新日:

 時は1938年秋。当代きっての流行探偵作家の小柳逸馬は、従軍作家として北京に派遣されていたが、突然、前線へ向かうよう要請を受ける。北支那方面軍司令部検閲班長の川津中尉の案内で着いた先は万里の長城の張飛嶺。当地はゲリラの攻撃が頻発し、その守備要員として歩兵大隊が置かれていたが主力は前線に抜かれ、現在は3個分隊30人が警備に当たっていた。そのうち第一分隊10人全員が死亡する事件が発生。小柳にこの事件を解明せよというのだ。

 小柳は川津と一緒に、関係者の聞き込みを始める。ところが、現場に残された証拠から推察される事件の概要と証言者たちの供述とがことごとく一致しない。分隊内でのあつれきや軍隊ならではの論理が複雑に絡まり、真相を見えにくくしていたのである。果たして彼らの死因は何なのか、そしてこの調査になぜ探偵作家が呼ばれたのか。

 ミステリーの手法を用いながら、「戦争の大義」「軍人にとっての戦争」とは何かという大きなテーマに挑む野心作。

(KADOKAWA 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 5

    広島・大瀬良は仰天「教えていいって言ってない!」…巨人・戸郷との“球種交換”まさかの顛末

  1. 6

    広島新井監督を悩ます小園海斗のジレンマ…打撃がいいから外せない。でも守るところがない

  2. 7

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 8

    令和ロマンくるまは契約解除、ダウンタウンは配信開始…吉本興業の“二枚舌”に批判殺到

  4. 9

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  5. 10

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か