「わが心のジェニファー」浅田次郎著

公開日: 更新日:

 幼い頃に父母が離婚し、元軍人で日本嫌いの祖父に育てられた米国人青年ラリー。日本人がいかに油断のならない人種かを聞かされ育ってきたにもかかわらず、連れ添いたいと思いプロポーズした女性・ジェニファーは、大の日本好きだった。

 彼女は同じ価値観を共有したいということを理由に、結婚する条件としてラリーに日本への一人旅を提案する。しかも、PCも携帯電話も持たずに旅に出て、旅先から手紙を書いて送ってほしいというのだ。

 彼女の要望に当惑しつつも、ラリーは日本へ旅立つ。成田、東京、京都、大阪、九州、北海道と日本各地に足を踏み入れるうち、彼はすっかり未知の体験に魅了されていく。そして旅の最後に自分自身の大きな秘密に出合うことになるのだが……。

 本書は、米国人青年の目を通して語られる、日本の魅力発見小説。肌をくるむような湿気、醤油と味噌のにおい、数分の遅れでも謝罪する交通機関、快適さの追求に余念のない精密便器、傷のない車の群れ、美術品のような食事など、日本人にとって当たり前でも実は当たり前ではない日本をラリーの目を通して再体験できる。(小学館 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “芸能界のドン”逝去で変わりゆく業界勢力図…取り巻きや御用マスコミが消えた後に現れるモノ

  2. 2

    落合博満さんと初キャンプでまさかの相部屋、すこぶる憂鬱だった1カ月間の一部始終

  3. 3

    渡辺謙63歳で「ケイダッシュ」退社→独り立ちの背景と21歳年下女性との再々婚

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    米価高騰「流通悪玉論」は真っ赤なウソだった! コメ不足を招いた農水省“見込み違い”の大罪

  1. 6

    大阪万博は鉄道もバスも激混みでウンザリ…会場の夢洲から安治川口駅まで、8キロを歩いてみた

  2. 7

    悠仁さま「9.6成年式」…第1子出産の眞子さん、小室圭さんの里帰りだけでない“秋篠宮家の憂鬱”

  3. 8

    参政党議員「初登院」に漂った異様な雰囲気…さや氏「核武装」に対しゼロ回答で現場は大混乱

  4. 9

    ダルビッシュの根底にある不屈の反骨精神 “強いチームで勝ちたい大谷”との決定的な違い

  5. 10

    悠仁さま「友人とガスト」でリア充の一方…警備の心配とお妃候補との出会いへのプレッシャー