「いま蘇る柳田國男の農政改革」山下一仁著

公開日: 更新日:

 日本民俗学の祖として有名な柳田國男だが、官僚としても長く活躍した。官僚のスタートは農商務省(現在の農林水産省と経済産業省)で、農務官僚として農民の生活向上のためにさまざまな提言をなしたが、それらの提言はあまりに水準が高く、時代を先取りしていたため、当時の農政・農業界からことごとく無視された。しかし、今こそその考えを活用すべき時期なのではないか? 本書は、現在の農政・農業問題を解決する指針として農政学者・柳田國男に新たに光を当てたもの。

 不在地主を帰農させ、小農業から中農業へ転換し、余剰の労働力を他の産業に振り向ける。農業機械の共同利用、農家相互間の金融等を行う産業組合の活用。効率のいい耕地の集団化、連担化といったものが柳田の構造改革案だが、これらは地主制=小農主義という明治以来の農業政策と真っ向から対立するもの。農水省出身の著者は、近代日本の農政が陥った病弊を暴き出し、柳田の改革案をてことして農政改革の抜本的な提言をなす。

(新潮社 1600円+税)



最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  2. 2

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  3. 3

    映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

  4. 4

    “やらかし俳優”吉沢亮にはやはりプロの底力あり 映画「国宝」の演技一発で挽回

  5. 5

    山尾志桜里氏“ヤケクソ立候補”の波紋…まさかの参院選出馬に国民民主党・玉木代表は真っ青

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  2. 7

    フジテレビCM解禁の流れにバラエティー部門が水を差す…番宣での“偽キャスト”暴露に視聴者絶句

  3. 8

    国分太一は“家庭内モラハラ夫”だった?「重大コンプラ違反」中身はっきりせず…別居情報の悲哀

  4. 9

    輸入米3万トン前倒し入札にコメ農家から悲鳴…新米の時期とモロかぶり米価下落の恐れ

  5. 10

    慶大医学部を辞退して東大理Ⅰに進んだ菊川怜の受け身な半生…高校は国内最難関の桜蔭卒